業務中や通勤途上での災害により、ケガをした場合や疾病にかかった場合、このような労災事故は労災から休業補償等が受給できます。
この制度は、労働者災害補償保険法で、決められており、労災保険から支払われます。
一般的に労災保険から支払われる休業(補償)給付や休業特別給付金が、給与の変わりになるものと考えられます。
不測の事態で、ケガや疾病になった際に、働く人が、確実に補償を受けられるようにするための制度です。
そこで、労災保険の給与の変わりとなる、休業(補償)給付の知識と、申請から支給の流れをご案内します。
1.労災休業補償の4つのポイント
1-1.休業(補償)給付について
労働者が、業務または通勤が原因となった負傷や疾病による療養のため労働ができず、そのために賃金を受けてないとき、その4日目から休業補償給付(業務災害の場合)、または休業給付(通勤災害の場合)が支給されます。
1-2.休業(補償)給付の概要
仕事上のケガや病気により休業する場合は、4日目からの支給となり、休業初日から3日目までは、補償されません。
この3日間については、会社(事業主)が平均給与日額の60%を補償しなくてはなりません。
ただし通勤災害の場合には、会社(事業主)が補償する義務はありません。
1-3.休業(補償)給付の内容
労災保険から以下の3要件を満たす場合に、休業した初日の4日目から、休業(療養)給付金と休業特別支給金が支給されます。
2. 働くことができないこと
3. 会社から、給与を受けてないこと
休業(補償)給付 給付基礎日額の60% × 休業日数
休業特別支給金 給付基礎日額の20% × 休業日数
*給付基礎日額とは、仕事中や通勤中にケガや病気が発生した日の直前3ヶ月に支払われた賃金をその期間の暦日数で割った1日当たりの賃金額です。(ボーナス等は除きます。)
例)Aさん 月30万円の賃金の場合 (賃金締切日は毎月末日)
10月に労災事故が発生により50日間の休業したケース(最初の休業期間3日除く)
30万円(賃金)×3(直近3ヶ月)÷92日 = 9,782円61銭(給付基礎日額)1円未満は切上げなので、9,783円となります。
(暦日数 7月は31日、8月は31日、9月は30日)
休業給付 9,783円×60%×50日間 = 293,490円
特別支給金 9,783円×20%×50日間 = 97,830円
293,490 + 97,830 = 391,320円
よって、休業(補償)給付と休業特別支給金を合わせて80%の391,320円の受取りです。
1-4.休業(補償)給付の請求書の手配
労災の休業に申請する際は、下記書類の手配が必要になります。
業務災害用 | 休業補償給付支給請求書 様式第8号 |
通勤災害用 | 休業給付支給請求書 様式第16号の6 |
また休業の申請とは異なりますが、治療費の請求も必要となります。
労災保険指定病院である場合 | |
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業務災害用 | 療養補償給付たる療養の給付請求書 様式第5号 |
通勤災害用 | 療養給付たる療養の給付請求書 様式第16号の3 |
労災保険指定病院でない場合 | |
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業務災害用 | 療養補償給付たる療養の費用請求書 様式第7号 |
通勤災害用 | 療養給付たる療養の費用請求書 様式第16号の5 |
上記、申請書類はこちらから 厚生労働省ホームページへ
2.労災保険の休業(療養)給付などの手続きの流れ
2-1.会社への報告
2. 事故報告書等の作成または、報告をする。
3. 労災申請書類に被災者情報や事故状況等を記載し、会社に証明してもらいます
2-2.病院に書類提出し、証明してもらう
労災保険指定病院であれば、治療費の請求は病院から労災保険に手続きをしてくれます。
労災保険指定病院でなくても構いませんが、その場合は、一度治療費を全額支払い、そのあとで、費用をまとめて請求することになり、手間が掛かります。急激な事故等でなく余裕があれば、労災保険指定病院をおすすめします
2. 労災申請書類に被災者情報や事故状況等を記載し、会社に証明してもらいます。
3. 後日、なるべく早めに治療を受けた病院に指定の請求書を提出します。早めに提出することによって、費用を負担することなく治療を受けることができます。
2-3.労働基準監督署に提出
病院から、指定の請求書に病院からの証明をもらい、管轄する労働基準監督署に提出して下さい。
2-4.支給決定され振り込み
支給決定通知が届き、休業補償給付金、休業特別支給金等が振り込まれます。
給付金の支給までに約1ヶ月前後の期間がかかります。
また、休業(補償)給付や休業特別給付金等は、通常の場合、1ヶ月ごと位にまとめて請求することもできます。休業中の収入がなくなり、生活に困らなくなるために、複数に分けて請求することもできます。
3.『受任者払い制度』会社のメリット
この受任者払い制度とは、会社が休業(補償)給付分(特別給付金含む)を立替え、従業員に支払い、後日、会社の口座に給付金が振り込まれる制度です。
労災申請を労働基準監督署にしてから、給付金の振り込みまでに、およそ1ヶ月前後かかるため、従業員は生活に困ってしまいます。
しかし、休業(補償)給付等を申請する場合に、委任状を添付することにより、会社から、先に給付金相当分を立替えてもらい、給付金が会社の口座に振り込まれます。
この制度によって、従業員さんに先に給与を立て替えることで生活面などを、安心させることができますし、会社経営にとって資金の安心もできます。
4.労災保険の加入の条件とメリット
労災保険は、一般的に労働者を一人でも使用する会社は、労働保険法により加入しなければなりません。
保険料は全額会社負担となります。
労働者とは、正社員のみならず、パート・アルバイト等の方々すべての人をいいます。
労働者の方に労災事故が発生した場合、会社(事業主)は、補償を負わなければなりませんが、労災保険に加入していることによって、労災保険から給付され、補償責任を免れることができます。(ただし、休業する際の休業補償は、最初の3日目までは、事業主が平均賃金の60%を労働者に支払う必要があります。)
その他注意点として労災事故が発生した場合、労働基準監督署にその事故を報告しなかったり、虚偽の報告を行ったりした場合にも、刑事責任が問われることがあるほか、刑法上の業務上過失致死傷罪等に問われることがありますので、必ず報告してください。
まとめ
- 労災により、ケガや疾病になった際の給与(休業補償)は、労災保険から休業(補償)給付等で補償される。
- 労災保険からの休業(補償)給付と休業特別支給金で、基礎給付日額の80%の補償がある。
- 労災保険指定病院で治療した方が、治療費の負担がなく病院側が労災保険に手続きをしてくれる。
- 受任者払い制度があり、給付金の振り込みを会社に変更することによって、会社(事業主)から、労災保険から支給される前に休業補償を受給することができる。