損害賠償

PL法(製造物責任法)とメーカー保証期間の違い

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あなたはPL法とメーカー保証期間の違いが分かりますか?
PL法とメーカー保証は全く別のものです。製品自体が壊れただけではPL法の対象となりません。まずPL法自体どのような法律なのか、あまり知られていません。PL法のポイントを押さえてみると、メーカー保証との違いがわかり易くなります。
今回はPL法の基本部分を簡単に説明しますので、ぜひ読んでみてください。

 

1.PL法は製品の欠陥による損害賠償責任について定めた法律

PL法第一条にて「この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めること」と書かれているからです。
製品等が欠陥品で正常に動作しなかっただけといった場合はPL法の損害賠償にはあたりません。

1-1.PL法とメーカー保証の違い

・PL法は製品等の欠陥で他に何か損害が出た時に製造者等の賠償責任を定めたもの
・メーカー保証は製品自体の品質を保証したもの
  メーカー保証期間内 メーカー保証期間終了後
(購入日から10年まで)
製品自体の不具合で
何か損害がでた
(PL法事案)
被害の内容を明確にして、メーカーに損害賠償を請求しましょう
(損害賠償を請求する場合は被害が発覚してから3年以内に請求しましょう)
製品自体が壊れただけ
(メーカー保証事案)
販売店やメーカーに無償修理や
交換を依頼しましょう
×

 

2.PL法による損害賠償請求に必要な2つのコト

PL法で製造者に賠償責任を追及できる場合、2つの条件を満たすことが必要です。

1.製品に欠陥があること 
製品が爆発した、発火した 等・・・
2.その欠陥により、被った損害との因果関係を証明できること
ヤケドした、火事になった 等・・・

例)   加湿器を購入して使用していたが、内部から発火して自宅が燃えた

2-1.製品に欠陥があること

PL法での欠陥とは第2条第2項により「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう」と定義されています。欠陥は大きく分けて3つに分類されると言われています。

PL法における欠陥の分類

1.構造上の欠陥
製造物が設計仕様通りに作成されていない為、安全性に欠けるもの
2.設計上の欠陥
設計自体に問題がある為、安全性に欠けるもの
3.指示・警告上の欠陥
取扱説明書の記述に間違いがある場合正しい使い方を説明していないもの
間違った使い方をすることで危険が及ぶことを説明していないもの

2-2.その欠陥により、被った損害との因果関係を証明できること

写真や領収証など、形に残るものが何よりも最善の証明となります。要点は以下の3つです。

・ 被害が発生した日
・ 因果関係
・ 損害を被ったものと復旧にかかる費用及びそれに付随する費用

損害賠償請求できる金額の例

物の場合
購入した年月や購入価格より算出した現在の時価額、もしくはその修復にかかった金額
身体の場合
治療費・治療にかかる交通費・治療中仕事を休んだ場合の休業損害などの金額

自分で因果関係の調査が難しい場合

全国に原因調査を専門的に行っている業者がいます。
損害賠償請求をする場合は、相手にその調査費用も請求できます。

なぜ被害者が被害を証明しなくてはいけないのか?

被害者が被害の詳細を証明しなくてはならない理由は、でっち上げの訴えが横行しないようにするためです。PL法に限らず、民事裁判において相手に損害賠償請求をする場合は、被害者が被害を証明しなくてはなりません。これを立証責任と言います。

 

3.PL法の時効は10年

PL法で定められている適用期間は以下のとおりです。

・ 製品を購入してから10年間 
・ 製品の欠陥により損害が発覚してから3年間

 もし、あなたが製品の欠陥によって損害を被った場合は、その日から3年以内に製造者に損害賠償を請求しましょう。購入してから10年以内であっても、すでに損害が発覚してから3年を経過すると時効により請求できなくなってしまいます。

 

4.PL法の損害賠償事例

PL法で製造者の責任が問われた実際の裁判事例を見ていきましょう

例1
ズボンのポケットに携帯電話を入れたまま、こたつで約2時間半過ごしたところ、携帯電話の異常発熱により太ももに低温ヤケドを負った。

この裁判は、被害者が設計上・製造上の欠陥または指示・警告上の欠陥により損害賠償請求を起こしました。損害賠償請求額は約540万円。裁判所により支払命令が下された金額は約220万円です

例2
新築時に購入した建築材料から害虫がわき、 修復のため多額の費用がかかった。

この裁判は建築材料の防虫対策が不十分であり、安全性の欠陥があるとして損害賠償請求がされました。損害賠償請求額は約2000万円。裁判所は訴えた側の請求を全面的に認めました。

 

5.製造者はメンテナンスや部品の扱いに注意!パロマに学ぶ失敗例

製造品の部品は10年間、在庫を用意しておいた方が良いでしょう。
過去に大きな事件がありました。

5-1.死者21人。パロマ湯沸かし器一酸化中毒事件

パロマ工業が販売する1980年から1989年にかけて販売した屋内型の瞬間湯沸かし器において、排気ファンの動作不良により一酸化中毒事故が多発した事件がありました。最終的にパロマ工業は重大な過失(不正改造の指示など)があったとされ、民事の損害賠償請求だけでなく刑事的に業務上過失致死傷で有罪の判決が下されました。

原因の中に元々の欠陥もありましたが、大きく取り沙汰された点は不正改造でした。

ここでいう不正改造とは

メンテナンスの際に販売当初の設計と異なる方法で修理業者等が修理などを行ったことです。不正改造を行った背景の1つとして、正規部品が切れてしまい応急処置として正規の工程とは異なった別工程の修理をせざるをえなかったからです。行政からの通達では部品の保管は最低7年とされていましたが、パロマ工業はこの湯沸かし器において事故が多発しているのを知りながら、部品の保管期限の延長を行っていませんでした。

パロマの損失額は200億円超

事故発覚当初の会見ではパロマ工業のトップは「製品にはまったく問題ない。修理業者の不正改造によるものだ」と謝罪する姿勢を見せるどころか修理業者に責任をなすりつける発言をし、世の中のバッシングを浴びました。その後、捜査や裁判の結果、パロマ工業に過失があったとされ、損害賠償額やその後の対応費用を合わせて、パロマ工業は200億円超という損失を出すこととなりました。

 

まとめ

・PL法は製品等の欠陥により、なにか損害が出た時の法律である
・メーカー保証は製品自体の品質を保証するもの
・PL法で損害賠償請求するのなら、製品の欠陥と損害の因果関係を証明しなくてはならない
・PL法には時効がある
・メーカーは製品の部品は10年保管しておこう
・修理業者の応急処置が不正改造とみなされ、重大な過失ととらえられることもある

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