労災保険

熱中症は労災認定される!〜認定の条件と事故事例〜

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あなたは、これから訪れる夏に向けて「仕事中の熱中症は労災なのか」とお悩みではないでしょうか?

また、既に仕事中に熱中症になったことがあり、労災申請をするべきかどうか、労災として認められるのか、など迷っているのではないでしょうか?

そして、『今年は猛暑です!』『熱中症による死亡者が…』とニュースなどでも取り上げられているため、不安に感じていることと思います。

実は、仕事中の熱中症はれっきとした「労災」として認められる病気なのです。

この記事では、熱中症が労災認定をされるための条件や、実際に熱中症で労災の申請をするときはどうすれば良いのかを解説していきます。

厳しい猛暑に向けて、ぜひ内容を読み進みてください。きっとあなたの悩みは解決されるはずです。

1.熱中症が労災認定されるための条件

厚生労働省の統計(平成18〜27年)では、職場での熱中症による、死亡者および4日以上仕事を休んだ人の数は下記表の通り、平成22年に656人最も多く、その後も400人〜500人で推移をしています。

あくまで、「労災」として報告をされている数なので、実際にはこれより多くの方が職場での熱中症を経験していることが予想されます。

熱中症1

※出典 厚生労働省 職場における熱中症による死傷災害の発生状況

記事の冒頭でお伝えした通り、熱中症は労災として認められる病気です。
しかしながら、労災の認定を受けるためには一定の基準があるため、申請にあたりその基準を理解しておくことが大切です。

この章では熱中症が労災認定をされるための条件や、申請方法、実際の事例を紹介していきます。

1-1.労災保険で定めている基準

労働基準法により労災として認められる


労働基準法により、【非常に暑い場所での仕事による熱中症※】は仕事を原因とした病気であるとして、労災認定がされることになっています。

※労働基準法では【暑熱な場所における業務による熱中症】と表現されています

労災認定を受けるために必要な条件


熱中症が労災認定されるための基準は以下の通り、2種類あります。

1.一般的認容要件
2.医学的診断要件

このいずれかの条件を満たすことで熱中症が労災として認められます。
また、条件の詳しい内容は以下の通りです。

1.一般的認容要件

① 仕事をしている時間帯や場所に、熱中症となる原因があること(当日の気温・作業環境など)
② その原因と熱中症との間に因果関係があること(症状や発症までの時間など)
③ 仕事と関係ない、他の原因によって発症したものでないこと(持病などではない)

この3つの条件を満たすことで、熱中症が労災として認められます。

2.医学的診断要件

この医学的要件は簡単に言えば、医師によって【熱中症である】と診断された事実のことです。
また、医師が判断材料とする細かい条件は以下の通りです。

① 作業の内容、温度や湿度等の作業環境
② けいれんや意識障害等の有無、体温の測定
③ 脳貧血や、てんかん等による意識障害との判別

仕事中の熱中症は、このような基準のもとに労災認定されます。
しかしながら、認定の基準はわかったものの、実際にどのようなケースが労災として認められるのか、疑問に感じているのではないでしょうか?

そこで、次の章では労災として認定された事例をいくつか紹介していきます。

1-2.熱中症の労災事故事例

※ここでは仕事中に熱中症になってしまった人を【被災者】と言います。

厚生労働省より一部抜粋・要約

1. 60歳代 土木工事業 8月発生
被災者は午前8時から、草刈り機で除草作業を行っていた。11時頃、被災者が体調不良を訴えたため、車の中で休憩を取らせた。
11時45分、被災者から「体調が回復しないため午後は休む」との申し出があり、同僚が病院に連れて行こうとしたが、「自宅で寝ていれば治る」と言われ、車で帰宅した。
事業主が「体調は大丈夫か」と連絡をした際には「大丈夫」と返答した。
しかし、17時頃に帰宅した妻が心肺停止で横たわっている被災者を発見し、搬送された病院で死亡が確認された。
※ 現場での水分や塩分の摂取は労働者任せであった。
※ 被災者に対して熱中症に関する教育は行われていなかった。
 2. 20歳代 警備業 7月発生
被災者は8時30分から車両の誘導を行っていた。
業務終了後の16時50分に、「明日、明後日休みたい」と言い、車で帰宅したが、17時15分頃、近くの路上で倒れているところを通行人が発見し、119番通報により病院に搬送されたが、死亡した。
 ※ 被災者に対して健康診断は行われていなかった。
 3. 50歳代 警備業 8月発生
 被災者は8時30分から車両の誘導を行っていた。
業務終了後の16時50分に、「明日、明後日休みたい」と言い、車で帰宅したが、17時15分頃、近くの路上で倒れているところを通行人が発見し、119番通報により病院に搬送されたが、死亡した。
 ※ 現場に元請事業者が設置した、冷房、製氷機、塩飴等が備えられた休憩場所を、被災者は遠慮して休憩時に利用していなかった。
 4. 50歳代 食料品製造業 7月発生
被災者は7時50分頃から工場内で機械の操作を行っていた。 14時20分頃、上司がしゃがんでいる被災者を発見した。
被災者は背中に汗をかいていたが、「目まいがする程度で大丈夫」と言っていたため、エアコンがある部屋に移動させた。
被災者は自ら靴や帽子を脱ぎ、水分を取った。
14時30分頃、突然に被災者が床に崩れるように倒れ、病院に搬送されたが、6日後に死亡した。
※ 被災者に対して健康診断結果に基づく対応が不十分であった。
5. 30歳代 接客業 6月発生
被災者は、海外研修において現地時間の6時30分から渓谷を下り始めたが、現地時間の13時30分頃、体調不良を訴え日陰で休憩した後、意識を失い死亡した。
※ 現地の報道では気温は43°を超え、高温注意報が発令されていた。
6. 40歳代 建築工事業 9月発生
被災者は、7時50分頃から新築工事現場で、コンクリートブロックの仮置き作業を行っていた。
14時50分頃、被災者がふらつきながら歩き、よくわからない言葉を口走ったため、同僚が付き添い、水分を取らせて日陰で休ませた。
次第に被災者の目の焦点が合わなくなり、地面に倒れて呼びかけにも応じなくなったため、同僚が119番通報し、病院に搬送されたが、死亡した。
※ 被災者に対して、熱への慣れを作る期間は設けられていなかった。

 ここで紹介した事例からわかるとおり、【熱中症は死に至ってしまう病気】なのです。
そして、死亡をしなかったとしても、その症状などから、身体に大きな負担が掛かる病気ともいえるでしょう。

また、「労災保険を使ってしまうと会社に迷惑がかかるから…」などの理由から、熱中症の症状が表れているにも関わらず、つい我慢をしてしまい、大事になってしまった、というケースも考えられます。

1-1労災保険で定めている基準 で解説をした通り、熱中症は労災として認められる病気ですし、労災保険は働き手を守るための保険です。ですから、仕事が原因で熱中症になってしまったとき、あなたが安心して治療に専念するためにも、労災の申請は必ず行いましょう。

次の章では、労災の申請方法を解説していくので申請方法などでお悩みの方は引き続き、お読みください。

1-3.熱中症で労災申請をする方法

あなたが熱中症で労災申請をしよう、と考えたとき、想定できる状況は以下の2つです。

① 仕事中または、帰宅をした後に気分が悪くなり、自力で病院に行きとりあえず診察を受けた。その結果、熱中症と診断された。
② 建設現場などで急に倒れ、救急対応で病院に搬送され、熱中症と診断された。

いずれの場合も、労災指定の病院を使用することで、その場で治療費を払うこと無く治療を受けられますが、②の場合は病院を選ぶことは難しいでしょうから、一度治療費の立替えが発生することも予想されます。

そのような場合でも、後から労災申請を行い、認定を受けることで立替えた治療費が返金されるため、ご安心ください。

また、申請する際には書類の提出などが必要ですので、まずは会社の労災担当に相談をすると良いでしょう。
労災申請の詳しい手続き方法はこちらの記事でも紹介をしているので、ぜひお読みください。

【保存版!悩まずに労災申請の手続きを行うための手順書】
【退職後も労災申請は可能!損をしない為に知るべきこと】
【労災保険の給付金によって異なる3つの申請期限と注意点】

まとめ

ここまで解説をしてきた通り、熱中症は条件を満たすことで【労災】として認められる病気です。
あなたが「これって労災かな?」とお悩みの際には、いち早く安心するためにも、まずは申請を進めると良いでしょう。

また、事故の事例からわかる通り、熱中症で働く人が死んでしまう、という最悪の事態も起こりえます。
これは、会社にとっても、働く人の家族にとっても、マイナスなことしかないでしょう。

熱中症で労災事故を起こさないための予防策などは、また次の機会にご紹介しますので、この記事とあわせてお読み頂けると幸いです。

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