突如として現れたコロナウイルスの影響により、開催が予定されていたイベントの多くが中止・自粛せざるを得ない、という状況に陥っています。
すでに様々なメディアで取り上げられていますが、EXILEやPerfume、米津玄師など、著名なアーティストのライブからアニメフェス、プロスポーツに至るまで中止、延期、という主催者や各関係者にとっては億単位という大きすぎる損害を負う可能性もあります。
これからイベントを予定しているオーガナイザーの皆さまにおかれましても、『イベント開催できるのか!?』と肝を冷やしているのではないでしょうか。
このような未曽有の事態から、いま大きな注目を集めているのが、イベントを中止した際に補償を受けられる【興行(イベント)中止保険】です。
これまでは認知度がそこまで高くない保険でしたが、昨今とても大きな被害を出すこととなった大型の台風などによるイベントの中止を期に、注目されている保険のひとつです。
もちろん、主催者の皆さまが一番気になるのは【興行(イベント)中止保険】でコロナウイルスによる中止が補償されるのか?ということに限るかと思います。
この記事では、その一番気になる部分を解説していきますので、ぜひともお読みください。
1.コロナウイルスによるイベントの中止が補償される可能性は0ではないが極めて低い
まず、大前提としてコロナウイルスによるイベントの中止、自粛や延期は補償の対象外になる、とお考え下さい。事実として、保険会社で補償できる内容、補償できない内容、はしっかりと定められているのです。
では、実際にどの様な内容なのか、解説をしていきます。
1-1.なぜ保険で補償の対象にならないのか、は“保険約款”に明記されている
保険会社では【補償できる内容】【補償できない内容】が定められた【保険約款】という物をもとに保険の対象となるかどうか、を判断します。
まず、興行(イベント)中止保険で補償される中止の内容は大きくわけて4つです。
1.不測かつ突発的な事故による中止(交通機関のマヒなど予想ができない事態)
2.悪天候による中止(大型台風の接近、ゲリラ豪雨など)
3.出演不能による中止(出演者のケガ、病気など)
4.地震等の天災による中止
興行中止保険の詳しい内容については、こちらの記事でも解説をしているので併せてお読みください。
https://kaisya-hoken.com/event-cancel-insurance-3268
そして、今回のコロナ騒動に関係しそうな部分は
1.不測かつ突発的な事故による中止(交通機関のマヒなど予想ができない事態)
と
3.出演不能による中止(出演者のケガ、病気など)
です。
大手損害保険会社では、興行中止保険の約款の中で【補償できない内容】に下記の内容が明記されています。少し難しい言葉が使われていますが、かみ砕いた内容は後述するのでご安心ください。
出演予定者以外の者が、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)に規定する感染症にかかること、かかっている疑いがあることまたはかかる恐れがあること。
出演予定者以外の者→イベントに来場する人や、主催者側のスタッフや下請けの業者などが挙げられます。
法律に規定する感染症→2020年1月28日に新型コロナウイルスは指定感染症として定められました。
そのため、今回のコロナ騒動で来場者がウイルスに罹患する可能性があるため、中止したイベントは補償できない、という解釈になり、残念ながら主催者側は補償を受けることができません。
ここで発想を逆転させると、【出演予定者以外の者はダメ】ということは【出演予定者】の場合はOKなのでは?思ってしまいますが、その部分も下記の様に記されています。
※出演不能によるイベント中止を補償するオプション部分の約款より抜粋
出演予定者が感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)に規定する「一類感染症」、「二類感染症」「新型インフルエンザ等感染症」、「指定感染症」および「新感染症」にかかること、かかっている疑いがあることまたはかかる恐れがあること。
ここでも指定感染症による出演不能は対象外、とされているため出演者の感染を避けたイベント中止であっても対象外となります。
つまり、誰であろうとコロナウイルスに掛かっていることや、その恐れによる中止は門前払い、ということになり、補償の対象外になる、という事実だけが浮き彫りになります。
【コロナウイルスがイベント中止の直接的な原因では無いケースはどうなるのか】
しかしながら、不測かつ突発的な事故による中止という言葉に焦点を当てた場合、下記の様な考え方もできます。
例1
コロナウイルスが原因で、公共の交通機関がマヒ、もしくはストップせざるを得なくなり開催ができなくなった。
また、出演不能による中止の部分では
例2
コロナウイルスが原因で、アメリカ国内で日本への出入国が規制され、航空会社が日本への渡航をストップさせ、出演予定のアーティストが来日できなくなった。
ということも考えられます。
諸悪の根源は【コロナウイルス】なのですが、【行きたくても物理的に行けない】という部分を切り取ると、解釈によっては補償の対象になる可能性もあると言えます。
実際に保険会社の支払い部門に確認をしたところ、「今後、その様な解釈にいたることも考えらえる」という意見も見受けられました。
しかしながら、その様な状況にまで事態が発展することは、現時点ではあまり現実的ではなく、やはり補償の対象となる可能性は極めて低いことがわかります。
1-2.インフォデミックに惑わされず信頼のおける代理店を探すことも大切
連日、このコロナウイルスにまつわる情報が飛び交い、半ばデマのような話もよく耳にします。
感染症自体が世界中に広まる【パンデミック】がそこまで迫っている最中、【インフォデミック】はすでに起こっているのではないでしょうか。つまり、根も葉もない情報やデマが拡散され、情報の正誤が判断できない状態になっているのです。
こと、保険においてもインフォデミックは当てはまります。
例えば、『あそこの保険会社はコロナウイルスの中止も補償できるらしいよ』や『実は裏技があって保険がおりる方法があるらしいよ』など噂レベルの不確かな情報が拡散され、正しい内容で保険に入れない、意味の無い保険に入ってしまう、ということがあるかもしれません。
その様な誤った情報を入手することの無いよう、信頼できる保険代理店、保険会社としっかり連携が取れる代理店、事故が起きたときに安心して任せることができる代理店とお付き合いをしていくことも大切なポイントです。
まとめ
コロナウイルスによるイベントの中止が保険で対応できるのか、解説をしてきました。
今後、イベントの開催を予定しているオーガナイザーの皆さまも、『無事にイベント開催できるのか』と不安になっているかと思います。
大変残念ではございますが、記事のなかでも解説をした通り、現段階ではコロナウイルスによるイベントの中止を保険で補償する、というのは極めて難しい、という事実があります。
また、現段階では保険会社で商品の内容を変更・改定する、という予定も無いそうです。事態が収束した後、保険の内容に変更があり、今回の様な感染による中止が補償できるようになった際には、当サイトでも皆さまに向けて情報ができれば、と思います。