コラム

イベント中止で被る手痛い出費に備え加入しておくべき保険

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あなたがイベントを主催するとき、そのイベントの中止に備え保険に加入したことはありますか?

スポンサー集めや会場の選定、設営やスタッフ募集や出演者との交渉など、手塩にかけてようやく開催できたイベントが大型の台風により中止せざるを得なくなってしまった。もちろん考えたくはないですが、その日の天候は神のみぞ知ることであり、人の手によってコントロールできるものではありませんよね。

万が一イベントが中止になってしまったとすると、すでに払ってしまった会場の使用料やアーティストへの出演料の返還を求めることは不可能に近く、主催者側が損害のほとんどを被ってしまうことが予想されます。

規模によって様々かと思いますが、何百万、何千万という大金を負担すると、今後予定しているイベントにも影響を与え、後に続くイベントですら開催できなくなる、という悪循環ができてしまいます。

この様な最悪の事態を避けるために、イベントの中止に備える保険があり、主催者が入っておくことで安心を得ることができ、万が一の事態にも対応ができるようになるのです。

この記事ではイベント中止に備える、興行中止保険の仕組みや加入の方法を解説していきますので、定期的にイベントを主催している方、そしてこれから新たなイベントを立ち上げようとしている方はぜひお読みください。

1.悪天候・不測の事態でのイベント中止や延期が対象となる興行中止保険

興行中止保険で補償の対象となる事由は大きく分けて4つあります。

具体的には4つのうち1つは基本の補償で、残る3つは補償範囲を広げるためのオプション、としてお考えください。では実際にどのような事由が対象となるのか、解説をしていきます。

1-1.保険の対象にできるのは一時的なイベント

まず、この保険で対象になるのは期間を限定した一時的なイベントです。例えば、花火大会、ロックフェス、展示会、パレードなどが挙げられます。日常的に行われているものは対象外となりますのでご注意ください。

例えば、商業施設で毎週末行われているステージショー、ワゴンセール、遊園地の常設アトラクションなどは対象外です。

1-2.基本の補償は悪天候による中止や延期

台風、大雨、大雪の悪天候によるイベントの中止・延期が補償の対象となります。また、大型台風が接近している、といった【悪天候になるおそれ】でも対象となります。実際に2019年10月に発生した台風19号の影響でも多くのイベントが中止、延期となり興行中止保険がニュース等で取り上げられたこともありました。

日本代表が史上初ベスト8に進出したラグビーワールドカップでも台風19号の影響により3試合が中止となり、損失額が20億円以上と報道されておりました。それに加え、『大会組織委員会が興行中止保険に加入していたために救われた』ということも報道され、あまり世間に知られていなかった興行中止保険が注目される一件となりました。

参考:SankeiBiz 台風損害を補填「キャンセル保険」 ラグビー組織委も救われる

http://www.sankeibiz.jp/business/news/191016/bsm1910160500003-n1.htm

1-3.オプション1 悪天候以外の不測の事態による中止・延期を補償する

先ほど解説した悪天候に加え、会場設備の故障、交通機関の乱れ、火災など不測の事態による中止や延期が補償されます。例えば、コンサートイベントが音響設備の故障による中止せざるを得なくなった、などが挙げられます。

しかしながら、チケットの売上不足や観客不足によりイベントが成功する見込みが立たないことによって中止や延期をした場合は対象にはなりません。また、テロ行為やデモ行為によるものの対象外となります。

1-4.オプション2 出演不能による中止や延期を補償する

アーティストなどがケガや病気により出演できなくなったことによる中止や延期を補償できます。ただし、下記の様な理由ですと補償できない場合があるので注意が必要です。

対象外となる例

×保険を契約する前に出演予定者が発病していた病気やケガ

×麻薬やその他薬物の使用によるもの

×飲酒による酩酊

×気まぐれ

×感染症や新型インフルエンザにかかっていること、またはかかっている可能性がある

一部抜粋ですので詳しい内容は保険会社に確認しましょう。

ドタキャンによる中止は意外と少ない

著名なロックフェスで海外のアーティストがドタキャン、なんてニュースをよく耳にしますが、意外なことに統計上はそれほど来日キャンセルをすることは多くないようです。

Exciteニュース:海外アーティストの「来日キャンセル」割合はどれくらい?

https://www.excite.co.jp/news/article/E1547000364069/

こちらの記事では2017年~2018年に来日した主要な海外アーティストのワンマンライブのキャンセル率が記載されています。具体的には96.5%が予定通り来日し、キャンセルをしたのは3.5%となっております。

ロックフェスや多数のアーティストが参加するイベントでは、1組キャンセルが出たとしてもイベントは強行されることがほとんどだと思います。その反面ワンマンライブの場合、そのアーティストがいないとイベント自体が成り立たなくるため、その様なときに必要なオプションだと考えられます。

1-5.オプション3 地震・噴火・津波による中止や延期を補償する

このオプションでは下記3つの事由による中止等が補償されます。

1.日本国内で発生した地震

2.日本国内で発生した噴火、噴火による火山灰の降灰

3.地震・噴火による津波のうち、日本の沿岸まで到達、または到達が予測されるもの

2018年6月に発生した大阪府北部を震源地とする最大震度6弱を観測した地震により、様々なイベントが中止や延期を余儀なくされたこともありました。

日刊スポーツ 大阪の地震でライブやイベントの中止相次ぐ

https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201806180000591.html

大阪府北部を震源地とする最大震度6弱を観測した地震の影響で、開催が予定されていたコンサートやイベント等の中止・延期が相次いで発表されている。

KinKi Kids堂本剛のソロプロジェクト「ENDLICHERI」の公式サイトは今日18日に大阪フェスティバルホールで開催予定だったコンサートの中止を発表。明日19日の公演については「決定次第ご案内致します」としている。

さだまさしは今日18日、神戸市の神戸国際会館で予定していた「さだまさしコンサートツアー2018 Reborn~生まれたてのさだまさし~」の延期を公式サイトで発表。振替公演を8月8日に行うとした。

ももいろクローバーZの“妹分”グループで関西を活動拠点とするたこやきレインボーは、19日と20日に大阪市内で開催予定だったイベントの中止を公式サイトで発表。「今後も地震が予想されることや交通機関の運行状況がなおも不透明であることから」と説明している。

アイドルグループPassCodeは、今日18日に名古屋で開催予定だったコンサートについて「地震の影響によるご来場予定のお客様の安全等を考慮した結果、中止・延期予定とさせて頂きます」と公式ツイッターで発表した。

3人組ロックバンド、ヤバイTシャツ屋さんは、今日18日に大阪・高槻市で開催予定だったライブを延期を公式サイトで発表した。

俳優の中川大志らが出演する映画「虹色デイズ」は19日に予定していた大阪でのキャンペーンの中止を公式サイトで発表した。

そのほかにも「よしもと祗園花月」や「大阪松竹座」など大阪の劇場で公演の中止が発表されている。

名だたるアーティストが出演するイベントの多くが影響をうけ、損害額は計り知れません。

保険会社の承認が必要・開催地によっては補償できない場合もある

この地震等による中止につきましては、多くの保険会社で特別な承認が必要な補償となっております。また、開催地によっては補償をすることができない場合もあるため、保険会社・代理店にしっかり確認をしましょう。

では、実際にイベントが中止や延期になったとき、どの様な費用が補償されるのか解説を続けていきます。

2.興行中止保険で補償されるのは支出した費用と追加で必要になる費用

興行中止保険で補償の対象となるのは、

○イベント開催のために支出をしている費用(中止費用と言います)例:製作費、会場費、出演料等

○中止や延期により新たに必要となった費用(追加費用と言います)例:チケット払戻手数料等

です。

まず、中止費用について下記の図をご覧ください。

この図からお分かりの通り、会場の使用料など開催前に支出をした費用を補償することができます。

その反対に、イベントの中止や延期により掛からなくなった費用は対象外となります。また、すでに支出をしていても中止により回収ができた費用があればその部分も対象外となります。

次に、追加費用を解説していきます。

読んで字のごとく、イベントの中止や延期により新たに掛かる費用が対象となります。

例えば、チケットを払戻しした際に主催者が負担する手数料、延期をしたために別日程で会場を確保した際の会場費などが挙げられます。

この他にも、大規模なイベントであれば払戻し専用のコールセンター設置に掛かる費用なども予想されますので、中止や延期により掛かるコストをしっかりと抑えておくことが重要です。

3.興行中止保険への入り方

ここまでは補償の内容や補償される部分を解説してきました。なんとなく保険の全容が見えてきたのではないでしょうか?

では実際にどの様に補償の金額を設定し、保険に加入をするのかを解説していきます。

3-1.補償額は収支計画書に基づき設定する

まず、補償額を設定するために収支計画書が必要になります。例として架空のイベントの収支計画書をご覧ください。

※あくまで事例ですので費用の妥当性等については何卒ご容赦ください。

当日中止になっても払わなくても良い費用を【控除】として設定します。ただし、警備費や会場使用料など、デポジット金や手付金として既に払っている費用がある際には控除対象とはならないため、各所との契約に基づいて控除とするかどうか確認が必要です。例えば、警備費は開催日前に50%を支払い、終了後に50%を払う契約については控除対象にはしません。

また収益につきましては先ほどの解説の通り対象外となります。

この例ではイベントが中止になると警備費と清掃費が不要になることから、支出する費用からその部分を差引いた3,550万円が必要な補償額であることがわかります。

追加費用の考え方

追加費用についてはイベントを中止にするのか、延期にするのかで必要な額が変わってくると考えられます。例えば、延期であれば会場費が新たに必要になるでしょうし、代替日の警備費も別途必要になると予想されます。延期ではなく中止であれば、チケット払戻しの手数料や、払戻しの広告費、などが必要になるでしょう。

そのため、あらかじめ中止や延期に備えた費用面をしっかりと予想・予測をしておき正しい補償額を設定することで、適正な保険料で契約を結ぶことができます。

非常に使い勝手の良い興行中止保険ですが、実は加入できるタイミングに限りがあり、イベント開催日ギリギリで加入ができないので加入を検討する際には早め早めで進めていく必要があります。

3-2.開催予定日の14日前までに加入する必要がある

この保険はイベント開催予定日の14日前までに契約を結ぶ必要があり、それ以降ですと保険に入ることはできません。なぜこの様に入れるタイミングが限られているかと言うと、天気予報や出演予定者の体調によりイベントの中止が予見されるからです。

例えば、

★開催予定日5日前に、大型の台風が発生した、出演予定者の歌手が喉頭がんになったと発表された。

★主催者:中止や延期の可能性が高いため保険に入りたい。

★保険会社:中止・延期を前提とした保険への加入は不可※リスクが高すぎるため。

また、保険会社によってまちまちですが、とある保険会社では開催予定日の3か月前から補償を開始させることができます。下記の図で加入できるタイミング等をまとめましたのでご覧ください。

14日を過ぎてしまうと保険に加入ができなくなるため、早い段階で保険会社・代理店に相談をして保険加入の準備を進めましょう。また、保険でかかるコストもギリギリになって把握するより、早い方が予算組みをし易くなるかと考えられます。

まとめ

イベントの中止や延期の際に役立つ興行中止保険について解説をしました。

花火大会や音楽フェス、グルメフェスなど様々なイベントが日本全国で開催されています。今年2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されるため、五輪関連のイベントが多くなることも予想されます。

また、イベントは単にお祭り騒ぎをするだけでなく、地域の発展や町興し、新しくトレンドを作る、など裏に隠された大切なテーマがあるものだと考えられます。

その様なイベントを安心して企画・運営する材料のひとつとして、保険を有効活用していただけると幸いです。

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