損害賠償

従業員は常に録音していると思え!会社を悩ませるパワハラ問題

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「このハゲーッ!」発言の某議員で大々的にニュースにもなりましたが、パワハラなどを含めた労務関係のトラブルをはじめ、企業側にとって従業員の録音は非常におそろしい存在です。

昨今、従業員は常に録音する機械を持っています。
そう、それはスマホです。いとも簡単に、従業員は録音をすることができる環境にいるのです。
あなたの発言は、常に録音されていると思っていたほうが良いでしょう。

そう考えてしまうと、従業員に対してどう発言してよいかと及び腰になってしまう方もいらっしゃるでしょう。必要な指示すら躊躇するようになってしまい、あげく業務に支障が出てしまっては元も子もありませんよね。ですから、この記事ではどういった発言が企業にとって不利な状況になってしまうのか、またどう対策していくのか解説していきます。ぜひ、参考にしてください。

1.パワハラは6つの類型に分類される

厚生労働省が開設している「あかるい職場応援団」にて、パワハラ行為を6つに分類しています。

1.身体的な攻撃
2.過大な要求
3.過小な要求
4.人間関係からの切り離し
5.個の侵害
6.精神的な攻撃

こうした行為が、職場、職場の地位や優位性の上で行われたものをパワハラとしています。
パワハラの裁判は、この6つの行為が複合されて争われています。

身体的な攻撃、過大な要求、過小な要求、人間関係からの切り離しなどは比較的外見からわかりやすいものが多いのですが、この中で従業員の録音が物的証拠として、大きなカギを握るのが個の侵害、精神的な攻撃です。

では、次章では実際パワハラと認定された発言を見ていきましょう。
そう、従業員に録音されていたらアウト!な発言です。

2.パワハラ訴訟で取り上げられた発言集

実際に裁判で取り上げられて、争点になった発言を見ていきましょう。

「自己愛が強い」
「子宮でものを考えている」
「不要な人間なのに会社にいられることに感謝していない」
事件名不詳 東京地裁平成25年1月30日判決

「ぶっ殺すぞ。」
ザ・ウィンザーホテルズインターナショナル(自然退職)事件(控訴審)
東京高裁平成25年2月27日判決

「できが悪い」
「何をやらしてもアカン」
日本ヘルス工業事件 平成19年11月12日 大阪地裁

「会社を辞めれば済むと思っているかもしれないが、辞めても楽にならない」
前田道路事件 平成21年4月23日 松山高裁

etc…

パワハラ発言かどうかは「受けた側の気持ちの捉え方」といった考えもありますが、裁判ではどう判断されるかというと、

・ 人格権を侵害しているかどうか
・ 多くの人が人々が一般的にどうとらえるか
・ 頻度や状況

など、多角面で判断されていきます。ですから、

度々遅刻する従業員に対し、部署の全員の前で叱る

といった行為をした場合、部署の皆の全員で叱るのは一見、パワハラにあたりそうな気もしますが、ただこれだけではパワハラにあたるかどうか判断が難しいのです。例えばこの際に従業員に対して

「お前は人間失格だな!脳みそサル並みだな!サルのマネしてみろ!」

と怒りに任せ、言ったとすると人格権を侵害したとしてパワハラ行為としてとらえられる可能性が高くなります。
人格権の侵害とは、なんとなくイメージが付くでしょうが具体的にどんなことなのでしょうか。

2-1.人格権を侵害につながるもの

①刑法の暴行罪、脅迫罪に当たるもの
②法に違反する行為の強制、強要、
③相手の人格や尊厳を侵害する意図や苦痛を与える意図でなされた言動

例えば「営業目標を達成しなければ、ぶん殴るぞ!」といった脅すような発言、もしくは殴ってしまった場合は、①刑法の暴行罪、脅迫罪に当たるものですよね。②に関しては、職場の飲み会で酔いの勢いあまって公衆の面前で裸踊りのするよう促したりすることです。体育会系の会社の皆さま、大丈夫ですか?
さて、先ほど「お前は人間失格だな!脳みそサル並みだな!サルのマネしてみろ!」の発言は、暴行・脅迫までは行かず、違法な行為とまでいかないかもしれません。

しかしながら、遅刻を注意する行動に、人間であることを否定する発言、サルのマネをさせることは不必要です。これは、③に該当する行為と言えるでしょう。ここで、パワハラにつながるかどうかの判断基準を表にまとめました。

さて、これを踏まえてその中でもとりわけ気を付けないといけない分野があります。

2-2.退職強要・不当解雇につながるよう発言は特に注意が必要

お前なんてやめちまえ!
いつでもこの会社にいられると思うな!
etc…

業務中の注意をする上で、例え辞めさせることが本音でなかったとしても、従業員からすると退職強要と受け取ってしまう場合があります。
録音されてしまうと企業にとって大ダメージです。絶対にこのような発言はしてはいけません。

退職強要に捉えられてしまうと後々、不当解雇という大きな問題に直面します。
なぜ度を越えた退職勧奨に注意が必要なのか、続けて次章をお読みください。

3.実はパワハラ慰謝料より不当解雇の損害賠償請求の方が怖い

最近、不当解雇を話題にする弁護士が多くなってきていると思いませんか?

それはなぜか。
率直に言うと、不当解雇による訴訟はほぼ負けることなくが弁護士がとても儲かるからです。
パワハラによって従業員本人が自殺し遺族が訴えてくる話は別ですが、従業員本人が訴えてくるパワハラに関する慰謝料相場は数十万円程度、多くても200万円程度です。
それに対して、不当解雇による損害賠償金は裁判が長引けば長引くほど、支払う金額が多くなるシステムになっています。
それを利用して、弁護士も争いを長引かせていたりします。1,000万円以上払う必要もあるのです。

争訟を長引かせたら、訴えた従業員が無給で生活できないんじゃないの?
だから、そんなに長引くパターンがレアケースなのでは?と思われる方もいらっしゃるでしょう。

実は不当解雇の場合、賃金仮払仮処分というものが認められる可能性が高いのです。

賃金仮払仮処分

裁判所が不当解雇になる可能性が高いな、かつ仮に給料を支払う必要があるなと判断すれば、裁判所は会社に対して、その従業員に給料を支払い続けるよう命じること

つまり、不当解雇で訴えた従業員は仕事せずとも給料が入ってくるという状態になります。
長引かせれば、弁護士も従業員もおいしい思いをするのが不当解雇の裁判です。
前職でこうした争訟従業員を新しい職場が簡単に知る術が無く、これぞ奇策!と不当解雇プロとして職場を転々と変えている人も現実に存在しています。

4.雇用関係のトラブルに備える保険がある

先ほどの章で、世の中には雇用トラブルを逆手にとっているプロ従業員がいるというお話しをしました。
会社側は黙って、泣きを見るしかないのでしょうか。
実は近年、雇用関係の問題に関する保険も各社から発売されており、こうした会社側のニーズに合わせて補償内容も進化してきています。
パワハラをはじめ、セクハラ・不当解雇の雇用関係の訴訟に備える保険です。
保険をあなたの会社の防衛の手段の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。

詳細は別記事にございますのでご覧ください。

加入は必須!パワハラで会社が訴えられたときに役立つ保険

まとめ

従業員は常にあなたの発言を録音していると思ってください。
パワハラを始めとする雇用関係の問題は、やった本人だけではなく会社にも責任を追及されます。
パワハラの慰謝料はそれほど脅威ではありませんが、不当解雇につながるととてつもないダメージがあなたの会社に押し寄せます。
雇用関係の問題は早いうちに目を積むのが一番ですが、こうしたトラブルが発生した際にはすぐに相談できる場所を確保しておくのも会社を継続させていくには必要不可欠な時代になったと言えるでしょう。

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