あなたは、『退職後も労災の申請はできるのか』『労災から補償を受けているが、退職をしても補償されるのか』とお悩みでは無いでしょうか?
また、会社で労災を担当している方は、『やめた従業員が労災申請を依頼してきた、申請する必要はあるのか』などお考えでは無いでしょうか?
労災保険は仕事をしている時(会社に勤めている時)だけの補償と考えられがちですが、実は退職をしても 補償を受けることができるのです。
この記事では、なぜ退職をしても補償を受けることができるのか、退職後の申請方法を紹介しています。
また、申請をする際の注意点を会社と退職者の視点から解説をしているので、退職後の労災申請で お悩みの方は、ぜひこの記事を読み進めてみてください。
1.なぜ退職後も労災の申請ができるのか
労災保険法により退職後も申請ができる
労災保険法(12条の5)では【保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない】と明確に定めています。
つまり、あなたが仕事を辞めたあとでも、仕事を原因とした怪我や病気であれば、労災の申請を進めることができます。
※例えば…
うつ病や腰痛、アスベストによる健康被害などは退職をした後に発覚する可能性が高いと言えます。
また、定年退職、希望退職、期間満了、また解雇の場合など形式に左右されず申請は可能です。
では、どのようにして退職後に労災の申請を進めるのか、次の章で解説していきます。
2.退職後の申請方法
基本的には、通常の労災申請の方法と流れは変わりません。
申請には原則として、請求用紙に労災の発生原因や発生日など、会社の証明(捺印)が必要です。
そのため退職後も会社との関係が良好であれば、労災の担当者に申請手続きを協力してもらうのが良いでしょう。
会社の協力が得られない場合は証明が無くても申請ができる
退職後に労災申請を進めるときに、会社の協力を得られない場合があります。
例えば、『そもそも会社が労災申請に前向きでない』『在職時に労災申請でトラブルになり退職した』、など協力をしてくれない原因は様々な理由が考えられます。
しかしながら、そのような場合でも申請を進めることはできるので、ご安心ください。
請求用紙を厚生労働省のHP、最寄りの労基署で入手、内容を記入したうえで、会社に証明を依頼したが協力を得られなかったことを説明する文書 を添えて労基署に提出をしましょう。
この文書は様式が決まっているわけではないので、書き方については労基署に相談するのが良いでしょう。
また、請求用紙の記入例は厚生労働省のHPで確認ができます。
倒産などで会社がなくなってしまった場合も申請ができる
退職をしてから時間が経過した後に、勤めていた会社が倒産などでなくなってしまった、というケースも考えられますが、この場合でも労災申請は可能ですのでご安心ください。この時は、会社がなくなってしまっていることを説明する文書 を添えて申請を進めましょう。
また、会社の協力が得られない場合と同様に様式は特に定められていないので、労基署に相談をすると良いでしょう。
リンク ※厚生労働省 労基署の所在案内
労災かどうかを決めるのは会社ではない
あなたの怪我や病気を労災として判断するのは労基署であり、会社が決定・判断をすることはできません。
そのため、「会社が労災として認めてくれない」「退職後の申請に協力してくれない」と悩みを抱えずに、速やかに労災の申請を進め、悩みのタネを無くすことが大切です。
3退職後の申請時に気をつけること
〜会社と退職者の視点から〜
前の章で解説をした通り、退職後の労災申請は通常の労災申請と基本的には変わりません。
しかしながら、退職後の申請だからこそ注意をするべき点もあるので、会社と従業員の視点から解説をしていきます。
もし、退職をした従業員から『労災の申請をしたい』と依頼があったときは、断らずに協力をしてください。
協力をしなかったために、『これは労災隠しだ、労基署に通告してやる』といった会社にとって不利益なことが発生するかもしれません。
さらに、従業員が退職に至るまでにトラブルがあった場合、その問題が大きくなる可能性も考えられます。
そして、1章で解説をした通り、従業員が労災保険の給付を受ける権利を退職によって失うことは無い、と法律で定められています。『退職したから関係ない』などの理由で協力をしないことは、労災隠しにつながってしまいます。
『なぜ辞めた従業員のために…』と思うこともあるかもしれません。
しかしながら、いらぬトラブルからあなたの会社を守るためには、退職者からの労災申請に協力をすることが大切です。
退職者の視点から
ここまで解説をしてきた通り、あなたが退職をして後でも労災の申請は可能です。
しかしながら、労災保険では給付金の項目ごとに時効があるため注意が必要です。
その時効については下記の図をご参考ください。
『退職してからかなり時間が経っているから』という理由で労災申請を諦める必要はありませんが、時効により補償が受けられないことが無いように、十分気をつけてください。
また、退職後の申請時に会社の協力を得られないときは、個人でも労基署に申請が可能ですが、どうしても会社の対応に納得がいかない、など不満や悩みがある際は、厚生労働省の労災相談ダイヤルや、法テラスなどに相談をすると良いでしょう。
労災相談ダイヤル:http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/dial.pdf
日本司法支援センター 法テラスのリンクはこちら
まとめ
この記事で解説をしてきた通り、退職後に労災申請をすることは何の問題もなく、通常の労災保険と同じように補償を受けることができます。
このことを知っているだけで、足踏みせずに申請が進められるのでは無いでしょうか?
また、会社で労災の申請を担当している方は、例え退職者からの依頼であっても、一緒に働いていた仲間を助けるために、そしてあなたの会社を守るために、ぜひ労災申請に協力をしてください。