労災保険

新入社員がうつ病で会社を訴える!?手遅れになる前に加入すべき保険とは

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あなたは新入社員がうつ病になってしまった時、会社にどの様な影響を及ぼすのか、とても不安に感じているのではないでしょうか。

ご存知の通り、近年仕事が原因でメンタルヘルスに異常をきたす人が多く見られています。特に新入社員は生活がガラリと変わることや、自分が思い描いていた社会人とのギャップなどから、入社後数か月でうつ病になってしまうケースがあるようです。

『最近の若い者は~』という考えもあるかと思いますが、現代において人事・労務にまつわるトラブルを軽視するようなスタンスは非常に危険です。
実際に新入社員が仕事を原因としたうつ病を発症し、自殺をしてしまったという非常に痛ましいニュースも報道されており、大きな社会問題にもなっていることはご存知かと思います。

さらに、新型コロナウイルスの影響を受け、人生の新しい一歩が『テレワーク』で始まる。など、内定をもらったときには予想もしなかった事態になっていることは明確であり、メンタルヘルスに支障をきたす要素が通常時に比べ増えていることが予想できます。

会社を経営する方や、部下を多く持つ方にとって耳が痛い話であり、万が一大事になっても会社を守るための術を知っておくことは非常に大切です。

この記事では、新入社員からうつ病を告げられたときに会社が取るべき行動、そして自殺や訴訟といった最悪のケースに備える方法を解説していきます。

1.うつ病は放置せずに即座に4つのステップで対応する

あなたの会社で新入社員から『うつ病です』と告げられた時は放置せずに、できる限り即座に対応しましょう。

対応が面倒だからと言って後回しにする、また見て見ぬふりをすると後々訴訟など大きなトラブルに発展する可能性があるからです。

では実際にどの様な対応が必要なのか、解説を進めていきます。

1-1.就業規則を確認し、休職時に対応すべきことを確認する

まず、社内の就業規則を確認し、うつ病で休職をする場合に会社がどの様な手当をすることになっているのかを確認しましょう。

規則で定められている内容と異なる対応をすると、『規則ではこうなっているのに』という指摘を受けたり、不信感を生んだりするため、しっかりと確認をしましょう。

また、就業規則でその様な内容が明確になっていない、といった場合は早急に内容の見直しが必要ですので、社内で担当部署に確認する、社労士に相談するなどの対応が求められます。

1-2.うつ病になっているという事実を確認する

次に、診断書の有無を問い、医師から“うつ病”と診断されているかどうかを確認しましょう。

診断書には治療に必要な期間も記載があるはずですので、先に確認をした就業規則と照らし合わせ、治療期間に対して会社がどこまで対応をすべきか明らかにしておきましょう。

また、医師の診断が確認できない場合は、該当者と病院に同行するなどの対応が必要です。

1-3.休職を促し、労災申請や傷病手当金の申請を進める

うつ病の治療に必要なのは十分な休養だとされているため、休職を促し治療に専念するように伝えましょう。うつ病の原因が仕事である場合、そのまま働き続けることは悪化の原因にもなりますし、業務効率の低下などから会社にとってデメリットが発生します。

そして傷病手当金や労災の申請を進め、従業員が経済的に困ることの無いよう、会社として誠意ある対応をしている、という姿勢を見せることが重要です。
なお、傷病手当金と労災保険では下記のような違いがあります。

また、上記以外に大きく異なるのは申請から支給決定までの期間です。傷病手当金の場合ですと概ね1~2か月とされていますが、労災保険の場合は認定まで6か月~1年以上かかることもあります。

そのため、下記の図のように一般的にはまず傷病手当金の申請を進めてから労災保険に切り替えることが多いようです。

うつ病の労災申請についてはこちらの記事で解説をしています。

うつ病で悩んでいる人に知ってほしい労災申請の基礎知識

また労災保険の申請方法についてはこちらの記事で解説をしています。

保存版!悩まずに労災申請の手続きを行うための手順書

一概にどちらが良いとは断定できませんが、仮に労災保険が認定されると【仕事が原因であった】ということになります。

その場合、仕事によるうつ病が原因で会社が訴えらえる、といった事態にも発展しかねないため、あらかじめその様なトラブルへの対策も講じていく必要があります。この点についは後述するので、ぜひ記事を読み進めて下さい。

1-4.新たなうつ病が発生しないよう、相談窓口の設置や周知徹底を行う

うつ病はウイルスが原因ではありませんが【うつる】という表現をされることがあります。残念なことですが、うつ病の従業員の対応をしている上司も気が滅入ってしまい、うつ病になってしまった、なんていうことも起こっているようです。

社内でうつ病が蔓延しないためにも、相談窓口を設置する、社外にアウトソーシングする、などの対策を用意しておくことが大切です。

また、既に用意がある場合でも『存在は知っているけど相談方法がわからない』 ということで有効活用できていないことがあるかもしれません。その様なことを無くすためにも、気軽に利用できるような工夫や周知徹底が欠かせないと考えられます。

しかし、大変残念なことではありますが会社としてしっかりと対応をした場合でも、従業員から訴えられてしまう可能性が無いとは言い切れません。

では、実際に訴訟まで発展をしてしまった時にはどの様な備えが必要なのか、解説を続けていきます。

2.訴訟まで発展をしてしまった時に備え、保険に加入しておく

うつ病になった新入社員を解雇した後、『うつ病になったのは会社のせいだ!』と会社を訴えてくる、うつ病を苦に自殺をしてしまい、『子どもが会社に殺された』等、遺族から訴えらえる、ということも考えられます。

その様な事態に備え、会社として保険に加入しておくことが必要です。

2-1.国の労災保険では補償されない慰謝料等は使用者賠償責任保険で対応する

新入社員のうつ病が【労災】として認定された場合、治療費や休業補償は労災保険から支給されます。

また、最悪のケースではありますが、うつ病を苦に自殺をしてしまったことが【労災】として認められた場合は死亡の補償も労災保険から支給がされることになります。

しかしながら、労災保険は最低限の補償という意味合いが強いため、万が一訴訟に発展したときの裁判費用や慰謝料、といった類の部分は補償されません。
労災訴訟における損害賠償金は年々増加傾向にあり、数千万円〜億単位といった巨額の賠償金を払うことになってしまいます。

数千万から億単位の高額な賠償金をキャッシュですぐに用意できれば問題ないのですが、とても現実的ではありません。実際に、下記の図から労災保険ではすべてを補えず、会社が大きな負担を強いられることがお分かりかと思います。

この不足分を補償するのが使用者賠償責任保険 です。

うつ病だけに限らず、高額化する労災訴訟から会社を守るために必要な保険ですので、加入をしておくべき保険のひとつだと言えます。

では、具体的にどの様な補償が必要なのか、解説を続けていきます。

2-2.使用者賠償責任は3億円以上の補償額、補償の対象者に漏れがないものにする

ここで、大手広告代理店に入社した男性社員が、2年目で自殺をしてしまった事例を紹介します。

長時間労働の結果うつ病にかかり自殺したケースの裁判事例(電通事件)
厚生労働省 こころの耳 より引用

本件は、新入社員のA(男性・24歳)が、慢性的な長時間労働に従事していたところ、うつ病に罹患し、自殺するに至ったことから、遺族である両親が会社に対して損害賠償を請求した事案です。

 具体的な事実経過は、以下のとおりです。すなわち、Aは、1990年4月に入社し、6月の配属以来、長時間労働で深夜の帰宅が続きましたが、当初は意欲的で、上司の評価も良好でした。1991年1月以降、帰宅しない日があるようになり、同年7月には元気がなく顔色も悪い状態となりました。さらに、8月に入ると、「自信がない、眠れない」と上司に訴えるようになったほか、異常行動もみられ、遅くともこの頃までにうつ病に罹患しました。そして、わずか入社1年5か月後の1991年8月27日、自殺に至ったというものです。

 本件の結論としては、二審の損害額の算定(減額)についての判断を破棄、差戻し(裁判のやり直しを命じること)とされましたが、その後の差戻審(東京高裁における審理)において、最終的には、会社が約1億6,800万円を支払うとの内容で和解が成立しています。

この事例からお分かりの通り、従業員がうつ病を苦に自殺をした結果、会社は約1億6,800万円という非常に高額な和解金を払うことになったのです。

このことから、使用者賠償責任は1億円を超える補償が必要であり、近年労務トラブルによる損害賠償額が高額化し続けていることも鑑みて3億円の補償が望ましいと言えます。

【注意!】特定の個人が名指しで訴えられることがあるため、補償の漏れがない保険が必要

先程解説をしたような訴えが起こったとき、遺族は【会社そのもの】と【会社の代表者(役員)】を連名で訴えてきます。さらに近年では、役職を持たない個人、例えば直属の上司や同僚などを名指しで訴えてくることもあるのです。

例えば、

・自殺をした新入社員の日記が見つかり、そこには教育担当から日常的にパワハラを受けていることが記録されていた。

・同期とのグループLINEのやり取りで、直属の上司からパワハラ・セクハラなどを受けていることを相談していた。

など、遺された記録から個人が特定され、会社・役員に加え、一個人が訴えられる、ということも十分あり得ます。

そのため、使用者賠償責任は一個人であっても補償の対象になるものが必要なのです。この部分は保険会社によって様々ですので、しっかりと補償の対象となる範囲を確認し、保険に加入することがとても重要です。
また、すでにこの保険に加入している場合は、現存の契約内容を確認し漏れがあれば見直しすることを強くお勧め致します。

この保険の詳しい内容はこちらの記事でも解説していますので、あわせてお目通しください。

使用者賠償責任保険が会社の企業防衛のために必要な理由

まとめ

新入社員のうつ病につき、対応方法や事態が悪化してしまったときの対策を解説してきました。

企業が発展、存続していくために人材は貴重な財産であり、簡単に手放すべきではないかと思います。そして、せっかく仲間になった従業員から訴えられてしまう、揉め事が起きてしまう、ということは双方にとって残念なことであり、マイナスな要素しかありません。

しかしながらその反面、人を雇うことすらもリスクになる、うつ病など働き手のメンタルヘルスが取り沙汰される現代において、会社としてしっかりと対策を講じておくことは非常に大切だと考えられます。
うつ病を起こさない、という対策が第一ではありますが、すべてを防ぐということはできないというのが実態かと思います。

この記事を参考に、万が一の事態を招いてしまった後の対策を講じていただけると幸いです。

 

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