労災保険

コロナは労災認定される!経営者が会社を守るために入るべき保険とは

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あなたは会社内でコロナウイルスが発生した場合、労災として認定されるのか、また会社の責任は問われるのか、疑問に思い、不安になっているかと思います。

もし、あなたが経営する会社の従業員が感染してしまったら…従業員の体のことも心配ですし、会社が責任を問われたらどうなってしまうか、とても大きな心配事ですよね。

最悪のケースは『会社は感染対策をしていたのか』『安全配慮義務違反だ!』なんて声が上がってくることも予想され、経営者は窮地に立たされてしまうかもしれません。

ですが、その感染が労災認定される可能性があるのかどうか、そして万が一の事態になってしまったときの対策を知っていれば、行く先の不安を少しでも減らすことができるのではないでしょうか。

この記事では、コロナウイルスが労災認定された事例やその基準などを解説していきます。
混乱の最中、安心して会社を経営していくために、ぜひお読みください。

1.現時点でコロナウイルスの労災申請は100%認定されている

意外な事実ではありますが、2020年9月下旬時点で審査が終わった685件の労災申請が全て【労災】として認定されています。この時点での申請件数は1,300件を超え、今後さらに労災認定が増えることが予想されます。

これは全国的な感染拡大を考慮して、厚生労働省が認定の基準を緩和していることが背景にあり、異例の対応として注目を集めています。

通常、脳梗塞、心筋梗塞などの仕事を原因とする病気の認定率が3割程度、ということからも、非常に認定されやすくなっており、“国の本気度”が感じられます。

具体的には、感染するリスクが高い医療従事者や介護職はもちろんのこと、その他の業種でも感染経路が特定されている場合は対象となる、と厚生労働省が方針を明らかにしています。

さらに、驚くべきことに【感染経路が特定されない場合】でも感染するリスクが高かった、という事実があれば認定されている事例もあるのです。
ここからは厚生労働省がどのような方針を定めているのか、解説を続けていきます。

1-1.コロナウイルスが労災認定される3つの基準

厚生労働省では下記の通り、コロナウイルスの労災対応・認定について具体的な3つの基準を挙げています。
新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱について より抜粋・要約

  1. 医療従事者など
  2. 医療従事者以外で感染経路が特定された場合
  3. 医療従事者以外で感染経路が特定されないが、感染のリスクが高い場合

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.医療従事者など

診療や看護、介護の仕事に携わる、医師や看護師、介護従事者が感染した場合は、原則として労災保険給付の対象となる。
※明らかに業務外で感染した場合は除く

2.医療従事者以外で感染経路が特定された場合

感染源が職場内にあったことが明らかに認められる場合は、労災保険給付の対象となる。

3.医療従事者以外で感染経路が特定できないが感染のリスクが高い場合

調査をしても感染経路が特定されないときでも、感染リスクが高いと考えられる以下のような環境で仕事をしていた場合は個別に判断する。

  • 請求する人を含めて2名以上の感染者が確認された環境下での仕事

  • 顧客等との接触の機会が多い労働環境 ※小売業、バス・タクシーの運転、保育などを想定

【少しでも基準に当てはまりそうな場合は即座に労災申請をすべき】

もし会社内でコロナウイルスが発生し、ここで解説をした3つの基準に当てはまりそうな場合は、迷わずに労災の申請を進めるべきです。

曖昧な判断で、『認定されないかも…』と不安に思わないためにも、思い切って労基署に判断を委ねるほうが得策ではないでしょうか。

また、従業員が感染したことを知りながら申請しないことは、会社への不信感にもつながります。
『あそこの会社でコロナが出た』という社会的なイメージダウンも否めませんが、申請をしなかったことで起こる従業員とのトラブルを避けるためにも、可能な限り早く申請を進めることが大切です。

では、実際にどのような内容で認定されているのか、ここでお伝えした3つの基準ごとに事例を紹介していきます。

1-2.コロナウイルスの労災認定事例

ここからは厚生労働省が公表している労災認定の事例を、3つの基準に沿って紹介していきます。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る労災認定事例より引用

1.医療従事者等の例

医師の事例

A医師が診察した患者に発熱等の症状がみられ、その患者は後日新型コロナウイルスに感染していたことが判明した。

その後、A医師は発熱等の症状が出現し、濃厚接触者としてPCR検査を行ったところ、新型コロナウイルス感染陽性と判定された。

労働基準監督署における調査の結果、A医師は、業務外で感染したことが明らかではなかったことから、支給決定された。

介護職員の事例

介護職員のCさんは、訪問介護利用者宅で介護業務に従事していたところ、利用者に新型コロナウイルス感染が確認されたため、濃厚接触者としてPCR検査を受けた結果、新型コロナウイルス感染陽性と判定された。

労働基準監督署における調査の結果、Cさんは、業務外で感染したことが明らかではなかったことから、支給決定された。

2.医療従事者以外で感染経路が特定された例

飲食店店員の事例

飲食店店員のEさんは、店内での業務に従事していたが、新型コロナウイルス感染者が店舗に来店していたことが確認されたことから、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。

また、労働基準監督署における調査の結果、Eさん以外にも同時期に複数の同僚労働者の感染が確認され、クラスターが発生したと認められた。

以上の経過から、Eさんは新型コロナウイルスに感染しており、感染経路が特定され、感染源が業務に内在していたことが明らかであると判断されたことから、支給決定された。

建設作業員の例

建設作業員のFさんは、勤務中、同僚労働者と作業車に同乗していたところ、後日、作業車に同乗した同僚が新型コロナウイルスに感染していることが確認された。

Fさんはその後体調不良となり、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。

また、労働基準監督署における調査の結果、Fさんについては当該同僚以外の感染者との接触は確認されなかった。

以上の経過から、Fさんは新型コロナウイルスに感染しており、感染経路が特定され、感染源が業務に内在していたことが明らかであると判断されたことから、支給決定された。

3.医療従事者以外で感染経路が特定できないが感染のリスクが高い事例

★請求する人を含めて2名以上の感染者が確認された環境下での仕事
工事現場施工管理者の事例

工事現場の施工管理業務従事者であったGさんは、担当する現場の施工状況を管理する業務に従事していたが、発熱、咳等の症状が出現したため、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。

労働基準監督署において調査したところ、Gさんの感染経路は特定されなかったが、発症前の14日間に、換気が不十分な工事現場の事務室において日々数時間現場作業員らと近接な距離で打合せ等を行っており、Gさんの他にも、新型コロナウイルスへ感染した者が勤務していたことが認められた。

一方、発症前14日間の私生活については、自宅で静養するなど外出はほとんど認められず、私生活における感染のリスクは低いものと認められた。

医学専門家からは、換気が不十分な部屋で、他の作業者と近接な距離で打合せを行うなどの状況から、当該労働者の感染は、業務により感染した蓋然性が高いものと認められるとの意見であった。

以上の経過から、Gさんは、新型コロナウイルスに感染しており、感染経路は特定されないが、従事した業務は、複数の感染者が確認された労働環境下での業務と認められ、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと判断されることから、支給決定された。

★顧客等との接触の機会が多い労働環境
タクシー乗務員の事例

タクシー乗務員のIさんは、乗客輸送の業務に従事していたが、発熱の症状が出現したため、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。

労働基準監督署において調査したところ、Iさんの感染経路は特定されなかったが、発症前の14日間の業務内容については、日々数十人の乗客(海外や県外からの乗客を含む)を輸送する業務を行っていたことが認められ、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務に従事していたものと認められた。

一方、発症前14日間の私生活での外出については、日用品の買い物などで、私生活における感染のリスクは低いものと認められた。
医学専門家からは、密閉された空間での飛沫感染が考えられるなど、当該乗務員の感染は、業務により感染した蓋然性が高いものと認められるとの意見であった。

以上の経過から、Iさんは、新型コロナウイルスに感染しており、感染経路は特定されないが、従事した業務は、顧客との近接や接触が多い労働環境下での業務と認められ、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと判断されることから、支給決定された。

いかがでしたでしょうか?事例をみると、基準にのっとり認定されていることがおわかりかと思います。

しかしながら、今回の騒動で柔軟な対応をしている労災保険には自動車保険で言うところの『自賠責保険』と同じ考え方で『補償は必要最低限』という側面があります。
そのため、コロナウイルスが原因で亡くなってしまう、後遺障害が残る、など重大な事故になったとしても当事者は最低限の補償しか受け取ることができません。

また、お金は本人や遺族に労災保険から直接支払われるため、

『コロナでこんなに苦しい思いをしたのに会社は何もしてくれなかった』

という印象を与えてしまいます。
この様なことがきっかけで労災訴訟まで発展すると、何千万円という損害賠償命令が下る、ニュースや新聞などで報道されてしまう、など経済的・社会的に大きなダメージを負うことになります。

そういった事態を避けるために役に立つのが、労災上乗せ保険(任意労災保険)です。

2.労災上乗せ保険でより手厚い補償・対策を用意する

【労災保険は一家の大黒柱が亡くなっても数百万円の補償しか出ない】

先程お伝えをした通り、労災保険は必要最低限の補償であるため、万が一コロナウイルスで従業員が亡くなってしまい、それが労災認定をされたとしても数百万円程度のお金しか出てきません。

具体的な例をひとつ紹介致します。

“年収500万円の男性 妻1人、子2人(18歳未満)が亡くなってしまった場合

  • 初年度に支払われる補償額:約600万円(そのうち一度だけ受け取れる金額が300万円)

  • 次年度から支払われる補償:約300万円(年金として)

初年度こそ年収を超える補償を受け取ることができるのですが、その後は300万円の年金のみ、ということになります。

さらに、子どもが18歳を超えると年金の受給資格がなくなるため、受け取る金額が少なくなります。
これでは遺された家族が大きな負担を強いられることになってしまい、到底納得できるものではないですよね。

また、労災保険からは慰謝料が出ないため、

『うちの主人がコロナで死んだのは会社が感染対策を十分にしていなかったせいだ!』

など、いわゆる【安全配慮義務違反】だとして遺族から訴えられても、労災保険からは何も補償されません。

そのような事態を避けるために有効なのが、労災上乗せ保険、と言われているものです。
では、どのような内容の保険が必要なのか、解説を続けていきます。

2-1.3つのポイントをおさえた労災上乗せ保険で会社を守る

労災上乗せ保険で会社を守るためには、これから紹介する3つのポイントをおさえたものが必要です。

  1. 仕事が原因でかかった病気(業務上疾病)が補償されるもの
  2. 慰謝料の相場にあわせた死亡保険金を設定する
  3. 高額な労災訴訟に耐えられる使用者賠償責任がついている

それでは順番に解説していきます。

1.仕事が原因でかかった病気(業務上疾病)が補償されるもの

過労による脳梗塞、心筋梗塞、うつ病で自殺、など仕事を原因とする病気が労災認定をされたときに対応できる保険が必要です。※コロナウイルスは業務上疾病として位置づけられています。

会社契約で従業員に生命保険や傷害保険を掛けている経営者の方は特に、今の契約を見直してみましょう。

生命保険の場合、補償される人が限られ、補償の漏れが発生しているケースが最大の問題点です。
パート、アルバイトの方々まで補償されているのかなど、是非確認しましょう。

また、傷害保険に加入している場合、その名の通り「ケガだけ」が対象になっている契約がほとんどで、病気(業務上疾病)がカバーされない契約が大半ですので、病気もカバーできるものに見直すことをお勧めします。

2.慰謝料の相場にあわせた死亡保険金を設定する

2020年10月現在、労災で従業員が死亡したときの慰謝料の相場は、裁判例に基づき2,800万円だとされています。

つまり、労災保険で対象とならない上記の慰謝料を目安に、2,000万円〜3,000万円を死亡保険金として設定するのが望ましいと言えます。
すでに保険に加入している場合でも、死亡保険金の設定が500万円・1,000万円という契約であれば早急に見直しをしましょう。

3.高額な労災訴訟に耐えられる使用者賠償責任がついている

会社での感染対策が不十分だったために、コロナウイルスに感染し死亡してしまった、などの理由で民事上の責任を問われた際に会社を守るための補償が【使用者賠償責任】です。

特に死亡という重大な事故では億単位の高額な訴訟になり、何も手立てがなければ会社は倒産への道を辿ることになってしまいます。その様な事態を避けるため、使用者賠償責任は3億円以上の設定が良いでしょう。

現時点でコロナウイルスを原因とした具体的な判例はありませんが、こういったご時世ですので、感染対策や働き方の工夫が不十分だったために『会社が従業員を守れなかった』といった場合、社会的にも法的にも責任は重くのしかかることが予想されます。

ですから、この使用者賠償責任は会社を守るために、必要不可欠な補償だと考えられます。

まとめ

記事のなかで解説をした通り、コロナウイルスは労災認定がされやすくなっている、といっても過言ではありません。もしあなたの会社で感染の疑い、があったときには悩まずにまず申請をすることが大切です。

認定されるかどうかわからないから、手続きの方法がわからないから、会社のイメージダウンにつながるから、といった会社都合の理由で請求をしない、ということは本来あってはならないことです。

福岡県のある会社働く男性がコロナウイルスで亡くなってしまったにも関わらず、会社が手続きを進めたのは2ヶ月後、という実例もあります。
亡くなった男性の妻は、

「会社にとってみたら、夫の代わりはいくらでもいるかもしれない。でも私たちにはたった1人の夫で父親なんです。こんなに夫が愛した会社だから悪いことは、ほんとは言いたく無かった。いまも働く社員のためにもどうか感染対策を徹底して、私たちと同じような悲しみを繰り返さないでほしい」

という悲痛な叫びをあげています。

この様なことがあなたの会社で起きぬよう、この記事をきっかけにコロナウイルスと労災保険の関係、そして会社と従業員を守ることをご理解いただけると幸いです。

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