労災保険

台風でも仕事を休ませない!という判断が会社に与える大きなリスク

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昨今、非常に強い台風が日本に上陸をすることが多くありますが、その様なときでも『仕事は絶対休めない』と言った声を耳にすることがあります。
海外と比べ、この文化は日本特有であり大変残念ではありますが【社畜】や【ブラック企業】という言葉の源になっているのも事実です。

その反面、企業としては、『従業員が来ないと会社がストップしてしまう』『仕事にならない』、という考えがでることも当然のことかと思います。

しかしながら、企業には従業員が安全に働ける環境を作らなければいけない、いわゆる【安全配慮義務】があるため、『台風なんて関係ない、電車が止まっていたらタクシーで来い』そんな一言がきっかけで大きなトラブルに繋がってしまうケースもあるのです。

万が一、従業員を無理に出勤させ、通勤中に風で飛んできた看板の下敷きになってしまったら…。大きなケガはもちろん、後遺障害が残る、最悪の場合亡くなってしまう、など単なる労災ではなく、訴訟にまで発展することも考えられます。

この記事では台風の際に仕事を強要することのリスク、そしてその対策を解説していきます。
人事でお悩みの方、経営者の方は会社と従業員を守るためにも、ぜひお読み下さい。

1.台風が原因のケガでも労災認定される

労災保険の原則としては天変地変(台風・大雪、地震など)によるものは対象外、とされていますが、ケガをした状況や仕事の内容によっては認定をされることもあるのです。

例えば、

  • 大型の台風が接近していて危険が予想されているにも関わらず、会社からの命令で出勤したときにケガをした。

  • 建設現場の高所で仕事をしているとき、暴風により落下しケガをした。

などが考えられます。

★ポイントは仕事との関係があるかどうか

先ほどの例のように【会社からの命令】によるもので、止む無く出勤をしたときのケガであれば【仕事によるもの】ということから労災認定がされることがあります。

しかしながら、【会社から待機を命じられているにも関わらず、自己判断で出勤をした】というケースであれば仕事との関連が認められず、労災保険から補償を受けることができなくなってしまうかもしれません。

労災か否か、その判断はケガをした当事者や会社ですぐに出来るものではありません。ですから、台風を原因としたケガが起きた際は、悩む前に会社として早急に労災の申請を進めておくべきだと考えられます。

しかしながら、仮に仕事との関係性が認められ、労災認定をされ、補償を受けることができたとしても【会社からの命令】で仕事をさせることには非常にリスクがあり、会社を危険にさらす可能性があるのです。

ここからは、具体的にどの様なリスクが会社を襲うのか、解説をしていきます。

2.無理に仕事をさせると、企業の安全配慮義務を問われる

あなたの会社が従業員をひとりでも雇っている場合、働き手が安全に働ける環境を作る義務、いわゆる安全配慮義務が発生します。

昨今、この安全配慮義務に違反をしている、ということで従業員と会社との間で裁判になるケースも大変多く、社会的にも注目を集めることになっています。

【台風21号で話題になったピザの配達】

ここで、2018年9月4日、台風21号が西日本に上陸した際に話題になったニュースを紹介します。
引用:2018年9月4日 弁護士ドットコムニュース
https://www.bengo4.com/c_5/n_8480/

非常に強い台風21号が9月4日、西日本を直撃して、猛威をふるった。インターネット上では、ビルの看板が飛ばされたり、トラックが横転したりする様子を映した動画が次々と投稿されている。その中には、宅配ピザのドライバーが吹き飛ばされているものがあり、「こんな日に配達させるなんて」と批判の声があがっている。

ツイッター上に、複数の動画が投稿されている。あまりにも強い風のため、宅配ピザのスクーターが倒されて、ドライバーが道路上で立ち往生しているところが映されているものがあった。ほかにも、ドライバーが、スクーターごと、数メートルにわたって吹き飛ばされているものがあった。

労働問題にくわしい佐々木亮弁護士は「ドライバーがケガをする可能性があるので、こんな日に配達させるのはおかしい」と切り出した。もし、ドライバーがケガをした場合、会社の責任はどうなるのだろうか。

「台風がきている中、会社は配達させているわけなので、当然、そういう事故が起こりうることを認識している、といえます。ドライバーがケガをして、亡くなったり、後遺障害が残った場合、損害賠償を請求されることになるでしょう。労災にもなります」(佐々木弁護士)

「逆に、途方もない額の損害賠償を請求されるおそれもあります。危機管理能力のある会社なら、ふつうは『やらせない』という判断になるでしょう」(佐々木弁護士)

このニュースから分かるように、【非常に強い台風が来ることを知っていながら仕事をさせた】ということが安全配慮義務に違反している、と言えるでしょう。

安全配慮義務違反の判例でわかる会社と従業員のホンネ

こちらの記事でも詳しく解説をしておりますが、会社だけでなく役員個人が名指しで訴えられる、長期に渡る裁判費用、ブラック企業としてのレッテル、など会社が多大な損失を被ることが考えられます。

あなたの会社ではこの様な事態に陥ってしまったときの対策を用意していますか?

よく、『うちの会社は大丈夫だよ』というお話を耳にしますが、実際に訴えがあったときに掛かる多額の損害賠償金や裁判費用などをすぐに用意できる、というケースはそうそう多くないかと思います。

ここからは訴訟になってしまい、高額な損害賠償金を請求されたとき備え、用意しておくべき保険を解説していきます。

2-1.労災訴訟による損害賠償金などが補償される保険に加入する

皆さまもご存知の通り、ハラスメントや残業代の未払い、過重労働などを巡り、従業員が会社を相手取り訴えを起こすことが当たり前になってきています。もちろん、仕事中のケガによる訴訟も同じことが言え、会社も何かしらの対策を講じておくことが欠かせません。
ここでひとつ想像をしてみて下さい。

台風が直撃しているにも関わらず、従業員を無理に出勤させ、その道すがら飛んできた看板の下敷きに。
その従業員は脊髄損傷の大怪我を負い下半身不随に、生涯の車椅子生活を余儀なくされた。

この後に待ち受けているのは、感情的になった家族からの訴えです。

仮にこの従業員が働き盛りの男性で妻子ある身であったとすると、訴訟の金額は数千万、もしくは億単位の話になるかもしれません。つまり、会社はとてつもなく大きな経済的リスクを負うことになるのです。

もちろん、労災として認定がされた場合は労災保険から補償されるのですが、労災保険には【慰謝料】や【お見舞金】の補償がないため、その部分は会社が負担する必要があります。

【高額な労災訴訟に耐えられる保険に加入しリスクを回避する】

この様な経済的リスクを避けるための手段として、労災訴訟に対応する保険があります。
損害保険各社で企業向けの保険として取り扱い、概ね労災の上乗せ保険にオプションとして付けるものです。

先ほどもお伝えをした通り、今日の労災訴訟での判決や和解金における金額は非常に高額化しているため、労災訴訟で会社が傾かないためにも、こういった保険は必要不可欠だと考えられます。

詳しい内容やポイントなどはこちらの記事で解説をしていますので、あわせてお読み下さい。

使用者賠償責任保険が会社の企業防衛のために必要な理由

まとめ

台風による労災、そして労災訴訟について解説をしてきました。たまたま【台風】がひとつの話題に挙がりましたが、これが【大雪】でも【地震】でも同じようなことが言えます。

きっかけが【天災】であっても従業員とトラブルが起こる背景には、そもそも【会社と従業員との関係が良好かどうか】ということがあるかもしれません。

今回の台風をひとつの参考にし、まずは会社の方針や規定を整理することがトラブルの種を失くす第一歩であり、重要だと考えられます。また、ここ数ヶ月のコロナ禍によりテレワーク、在宅勤務、という新しい働き方が社会に浸透しつつあります。

こういった働き方は、これから訪れる台風シーズンにも有効かと思いますので、積極的に取り組むのも会社を守る方法のひとつです。

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