1980年代に労働者派遣法という法律が施行され、人材派遣業界は拡大し続けてきました。
派遣社員を利用する会社が増えて、今のご時世、従業員がすべて正社員という会社も少なくなってきています。
しかしながら、こうした派遣社員が派遣先で起こした横領などの不正やミスなどにより、派遣元の会社が派遣先から損害賠償請求されたという事案も増え続けています。
もしあなたの会社が、派遣先から損害賠償請求された場合損害賠償に応じることはできますか?
飲食店には飲食店向けの保険、建設業には建設業向けの保険、そして人材派遣票には人材派遣業向けの保険があるのです。
この記事では、人材派遣会社で起こりがちなトラブルの実際の裁判事例や予防策、また保険の有効性について説明します。ぜひ参考にしてくださいね。
1.人材派遣会社が派遣先との間で抱える3つトラブル
② 派遣した人間が起こしたセクハラ・パワハラなどの問題を起こしてしまった
③ 派遣した人間が不正やミスをして、派遣先に損害を与えてしまった
人材派遣会社は人的トラブルが多いのが特徴です。
派遣した人間が派遣先でこうしたトラブルを起こして、頭を抱えている会社も多いのではないでしょうか?
特に、③は派遣先と派遣元との間でもめるトラブルNO.1です。
このような場合、派遣元は損害額の全額を支払う必要があるのでしょうか?
次章では実際に起こった裁判を見ていきましょう。
2.派遣先と派遣元で起こった実際の裁判事例
ここからは実際に派遣先と派遣元で怒った実際の裁判事例を紹介します。
それを踏まえて、今後人材派遣会社として損害の負担をすればよいのかを説明します。
今後あなたが人材派遣会社を営んでいく上で、トラブルを事前に回避するのに役に立ちます。
2-1.テンブロス・ベルシステム24事件
(東京地方裁判所平成15年10月22日判決)
概要 | 電話回線の訪問営業を行っていた派遣先で、派遣した人間が回線の申込者が記載する申込書を偽造して営業の成果が出たように見せかけ、派遣先からコミッションを詐取していた |
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裁判所の判断 | 派遣会社には派遣先に発生した損害の半分を負担するように命じた。 半額を負担としたことについて、裁判所は、派遣期間中は派遣社員は派遣先の指揮監督下にあるため、派遣会社としては派遣社員の動向確認が困難であること、派遣先による不正防止措置が不十分であったことも不正行為発生の原因の一つであるとし、派遣先の会社にも過失があるとした。 |
この事件のように、派遣した社員が不正を起こした場合、派遣先の指揮監督の不十分さにより起きた損害賠償は派遣先と派遣元で折半となるのが一般的です。
しかし、レアケースではありますが損害額の全額が派遣元に請求された事件もあります。
2-2.パソナ事件
(東京地方裁判所平成 8年 6月24日判決)
概要 | 派遣した社員は区役所の窓口業務の現場責任者で、住民票や印鑑登録証明書などの発行時に住民から受け取った手数料を着服 |
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裁判所の判断 | 派遣会社の社員が1週間に1回程度の頻度で派遣先を訪問して派遣社員を監督しており、派遣料も他の派遣社員の給与より高額に設定されており、言うなれば派遣会社が派遣先から派遣社員の監督業務を行っていた立場であったとみなされた。 つまり、監督責任者自信が不正を行っていたため、損害額の全額を不正を起こした側が負担することとなった。 |
派遣社員による不正や横領は裁判にまでもが発展する可能性が高い事案です。
では、このような派遣社員の不正や横領をはじめ、派遣元と派遣先でのトラブルをあらかじめ予防するためにはどうしたら良いのでしょうか?
3.派遣先と派遣元でのトラブルの対処法及び予防策
2章で不正や横領による損害の負担は派遣元と派遣先で折半が一般的であると説明しました。
不正や横領ではなく、単純に派遣社員のミスにより起こした損害はどのように負担すればよいのでしょうか?
一般的な例を表にまとめてみました。
不正・横領による損害 | 一般的に派遣元と派遣先で折半。 ただし、不正した本人が監督する立場のものだった場合は全額の場合もある。 |
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ミスによる損害 | → そのミスが明らかに不注意によって起こった場合 派遣先と派遣元で折半 事例 : 派遣社員が居眠り運転をしてしまい自動車事故を起こした → そのミスが不注意だけでおきたものだと言えない場合 |
やはり、派遣先には使用者責任があるためいくら派遣社員が悪くても、派遣元が損害額を全額負担する事例はほとんどありません。
とは言えど、互いにスムーズな取引をするためにも派遣契約を結ぶ際はしっかりと事前準備をすることによって、多くのトラブルを回避することができます。
1. 派遣先と派遣元であらかじめリスクシミュレーションを行い、労働者派遣契約書において、派遣先からの損害賠償請求に対しての負担割合を盛り込んでおく。
2. 身元がしっかりしている人材を採用する
3. 人材派遣会社用の賠償保険に加入する
3-1.派遣先と派遣元であらかじめリスクシミュレーションを行い、労働者派遣契約書において、派遣先からの損害賠償請求に対しての負担割合を盛り込んでおく
実際、損害賠償事案が発生した場合にその場になってから負担額について協議するのではなく、あらかじめ契約書に盛り込んでおくことで、スムーズに対応することができ派遣先との関係がこじれるといったリスクを軽減することができます。
3-2.身元がしっかりしている人材を採用する
猫の手も借りたい気持ちもわかりますが、不正や横領を防ぐためにも身元がしっかりとした人物を採用しましょう。
雇い入れの際には下記書類を取り付けた方がよいでしょう。
・ 身元保証書
しっかりとした人材を使用しているということで、あなたの会社の信用度も上がるでしょう。
3-3.人材派遣会社用の賠償保険に加入する
モメる元はやはりおカネです。
先ほどまで、派遣先と派遣元がモメている話を紹介してきましたが、これらの話は実際に人材派遣用の賠償保険に加入していれば、お金の問題は心配する話ではないのです。モメないために、派遣した社員が損害賠償事案を起こした場合にしっかりと責任を果たせるよう、賠償保険への加入は必須です。
人材派遣会社向けの賠償保険は、人材派遣業が抱えるリスクを網羅した補償内容となっています。
こうした賠償保険に加入していることは、取引先へもきっと好印象を与えるでしょう。
まとめ
人材派遣業はクレーム産業と呼ばれるほど、人的トラブルが多い業種です。
派遣先と派遣元との間でトラブルが絶えません。
少しでもトラブルを回避するために
・ 労働者派遣契約書をしっかりと作り込む
・ 身元のしっかりとした人材を雇用する
・ 人材派遣業用の賠償保険に加入する
といったことが非常に重要です。ぜひ、あなたの会社にも取り入れてみてくださいね。