最近は、労災申請して認定されているケースが年々増えています。
実際、過去のデータから比べると、請求件数が年々増加しています。
平成14年から比べても、約3倍以上増えています。*後述します。
多くの方の場合、うつ病は病気だからと健康保険で治療や傷病手当金を請求しているのが事実です。
しかし、業務上起因性だとしたら、どうでしょうか?
これは、労災ですよね。
うつ病に対しての理解、労災申請し認定されることによって、多くのメリットがあります。
労災保険と健康保険では補償される期間や支給額も異なるので、ここで詳しくお伝えします。
1.まずは仕事(業務起因性)からのうつ病を把握しよう
1-1.うつ病 の原因
毎日働いていたら、うつ病になったといっても、さまざまな原因があります。
一般的には、精神的、心理的からくるストレスによって引き起こされると言われております。
その代表的な原因がこちらになります。
過労 | |
---|---|
長時間労働や過重労働 | ・ 仕事量が多く仕事が終わらないから ・ 突発的な仕事があり、納期にゆとりがないから ・ 皆が残業しており先に帰ることができないから ・ 人員削減により人手が少ないから |
職場環境 | |
パワハラやセクハラ | ・ 上司からの身体的、精神的な攻撃(侮辱・ひどい暴言等) ・ 人間関係 (仲間はずし・無視 等) ・ 仕事上明らかに不要なことや不可能なことの強制、仕事妨害 ・ 仕事上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の 低い仕事をさせたり、仕事を与えない(過小な要求) ・ 私的なことに過度に立ち入ること |
1-2.うつ病 の症状
発症のきっかけはさまざまです。
あなた自身の物事に対する考え方や職場環境、日常生活において発生したストレスなどが複雑にからみあって、うつ病が引き起こされると考えられています。
その代表的な症状がこちらになります。
1) 自分で感じる症状
憂うつ・気分が重い・気分が沈む・悲しい・不安である・イライラする・元気がない・集中力がない・好きなこともやりたくない・細かいことが気になる・悪いことをしたように感じて自分を責める・物事を悪い方へ考える・死にたくなる・眠れない
2) 周囲から見てわかる症状
表情が暗い・涙もろい・反応が遅い・落ち着かない・飲酒量が増える
3) 体に出る症状
食欲がない・体がだるい・疲れやすい・性欲がない・頭痛・肩こり・動悸・胃の不快感・便秘がち・めまい・口が渇く
厚生労働省HPより
うつ状態で一般的にみられる症状になります。
うつ病の人は、冷静な判断が下せなくなっている可能性があり、自分に責任があると思い込みます。
ご自分の心身の調子の変化に気付いたら、一度はうつ病を疑ってみてください。
1-3.精神障害の労災申請は過去最多
過去の精神障害の労災補償状況を、把握しておきたいところです。
請求件数は1456件で前年比47件増で過去最多
支給決定件数は、497件で前年比61件増で過去最多 (厚生労働省より)
平成26年度の請求件数、支給決定件数は、過去最多となりました。
厚生労働省からのデータからグラフにまとめました。
過去から遡ると、労災申請件数、決定件数が右肩上がりの増加となっています。
でも会社には、労災だと主張すると立場が悪くなるという現実もあります。
しかし、年々こんなに多く、労災申請されていますので、珍しいことではありません。
1-4.労災認定の要件
以下、認定要件を満たすかどうかの判断を説明します。
- 認定基準の対象となる精神障害 を発病していること
- 認定基準の対象となる精神障害の発病おおむね6ヶ月の間に、
業務による強い心理的負荷 が認められること - 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
認定基準の対象となる精神障害の代表的なものは、
気分(感情)障害、神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害などになります。
業務による強い心理的負荷とは、厚生労働省の『業務による心理的負荷評価表』により
『強』と評価される場合に認められています。
2.うつ病労災申請のメリット
2-1.傷病手当金と労災補償の違い3つのポイント
労災保険の適用が、健康保険の傷病手当金よりも、
治療費、休業補償・手当金、給付期間など点において、優れているところを説明します。
①労災保険は治療費の自己負担0
まずは入院費用、診察料、手術代などの治療費に違いがあります。
労災保険であれば、治療費は手出し(自己負担)がありません。
②労災療養補償は給与の8割
傷病手当金は、休業補償のようなもので、給与(標準報酬日額)の2/3の補償ですが、
労災療養補償であれば、給与(給料基礎日額)の8割の補償が受給できます。
傷病手当金の算出方法
労災 休業補償の計算方法
③労災保険は、治癒、症状固定まで無期限
一番大切なところは、受給期間です。傷病手当金の受給期間は、1年6ヶ月迄で満了されますが、
労災保険は、期限が決められていません。退職後も治癒されなければ、受給され続けます。
代表的な3つのポイント
健康保険 ( 傷病手当金 ) | 労災保険 ( 休業補償 ) | |
---|---|---|
治療費 | 3割負担 ( 原則 ) | 自己負担0円 ( 原則 ) |
休業補償日額 or 傷病手当金 |
6割 | 8割 |
1日につき標準報酬日額 2/3 | 休業給付 給料基礎日額の60% | |
休業特別給付金 旧臘基礎日額の20% | ||
期間 | 最長1年6ヶ月 | 治癒、症状固定まで期限なし |
2-2.労災申請までの流れ
うつ病になり休業する場合は、まず健康保険から傷病手当金の申請をします。
その後、労災保険への申請するのが一般的です。
なぜかと言うと、労災認定まで半年から1年ほどの認定までの期間が長いからです。
申請の流れ
各種申請必要書類
傷病手当金の申請 | ①. 健康保険疾病手当金請求書 ご自身で記入する欄、会社の事業主、医師が記入する欄があります。 その他添付種類が必要。 請求書と添付書類記載 |
---|---|
労災保険の申請 | ①. 休業補償給付支給請求書(様式第8号) ②. 療養補償給付たる療養の給付請求書 (様式第5号)労災保険指定機関 療養補償給付たる療養の費用請求書 (様式第7号(1))指定でない場合 労災保険給付関係請求書等ダウンロード |
どちらの申請も、働いている会社でもご自身でも手続きできます。
3.うつ病と労災認定された会社の対応は?
うつ病に種類はあります。
長時間労働や職場環境、イジメからのうつ病
セクハラ、パワハラからのうつ病 など、さまざまな要因に注意が必要です。
そして、うつ病からの過労死や過労自殺 などのリスクを考えてください。
また労災認定されてしまえば、企業責任が認められ、
従業員ご本人やご遺族から会社に対し使用者賠償責任や安全配慮義務違反などが問われ、
訴訟に発展すると多額の損害賠償金を請求されるケースもあります。
実際に1億円以上の損害賠償金の裁判判決、聞いたことありますよね?
過労死民事訴訟被害者側勝訴判例データベース(出典)
しかし、労災保険は、損害賠償金の全てをカバーできせん。
慰謝料や遺失利益、争訴・弁護士費用などは労災給付されません。
そのような事態になる前に、損害賠償金や弁護士費用などに対応する損害保険が
用意されています。実際ご加入されている会社が増えています。
労務に詳しい保険代理店や社労士に聞き、ご検討されると良いでしょう。
まとめ
ご確認頂いたとおり、うつ病・精神障害等で労災申請の件数が、年々増加しています。
労災認定も、支給決定件数も増加傾向にあるのが現実です。
今後も、増えて行く傾向が見られます。
健康保険の傷病手当金より、労災保険で補償されることが、何よりも
今後のご自身の安心に繋がることもおわかりになったと思います。
1.治療費
2.傷病手当金と休業療養給付金
3.受給期間
ただし、労災認定まで時間がかりますので、健康保険と労災保険、
同時進行して申請していくことが賢明ですね。