労災保険

必見!職場で熱中症による労災事故を起こさないための予防策

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建設業など主に屋外で仕事をする会社にとって、熱中症による労災事故は、とても気がかりな事柄のひとつではないでしょうか?

そして、仮に職場で熱中症が発生したとき、
「労災申請ってどうやって進めるのかな?」「少し面倒かも…」
少なからず、このような感情が湧いてくることが予想されます。
※本来、労災申請は必ず行わなければいけない手続きですので、ご注意ください。

また、こちらの記事で解説をした通り、熱中症は労災認定をされる病気です。
熱中症は労災認定される!〜認定の条件と事故事例〜

「そうは言っても、労災を使いすぎると労基署の調査や指導が入ったりしないのか」
「そもそも労災の申請をし辛い」と疑問や不安を感じているのではないでしょうか?

確かに、熱中症の労災申請を多く行った場合、労基署から調査や指導が入る可能性はあるでしょう。

ここで発想を逆転させてみましょう。

【熱中症で労災事故が起こらない職場の環境】
を考えることで、「熱中症の労災申請、面倒だな…」という事態を避けることが出来るのではないでしょうか?

この記事では、職場で熱中症を起こさないための予防策や、万が一熱中症が発生してしまったときの対処法などを解説していきます。
熱中症から会社と働く人を守るために、ぜひお読みください。

1.熱中症で労災を起こさないための予防策

1-1.なぜ熱中症の予防策が必要なのか

結論として、労働安全衛生法という法律によって、会社は働く人の安全を守るように義務付けられています。

「労働安全衛生法」

労働災害を防止し、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を積極的に進めることを目的とする法律。1972年(昭和47年)制定。

仮に職場で熱中症による労災が発生し、働く人が亡くなってしまい、【会社が熱中症の予防策をしっかり立てていなかった】場合、安全配慮義務違反になる可能性が非常に高いと言えます。

そして、遺族から「会社のせいだ!」などと訴えがあり裁判になった場合、会社にとって不利益なことが起こるのは明確です。

詳しくは こちらの記事【安全配慮義務違反の判例でわかる会社と従業員のホンネ】

このような事態を避けるためにも、熱中症による労災を起こさないための予防策を、会社としてしっかりと考えることが必須だと言えるでしょう。では実際にどのような予防策があるのか、厚生労働省が推奨している内容を抜粋し、解説をしていきます。

1-2.チェックリストを使いリスクを洗い出す

チェックリストで自己点検し、現状を理解する

厚生労働省では、職場の熱中症予防対策が万全か確認をするためのチェックリストを作成しています。
チェック項目は大きくわけて8つあります。(それぞれにある細かい項目は割愛すべきか悩み中)
このチェックリストを活用し、あなたの会社が現状、どれだけ対策が出来ているか確認すると良いでしょう。

1.WBGT値(暑さ指数)を活用していますか?
□ 現場でWBGT値※1を測定する場合は、黒球つきのWBGT測定器※2を使用しましょう。
□ WBGT基準値を大幅に超える作業場所で作業を行わせる場合は、単独作業を控え、休憩時間を長めに設定しましょう。
 2.休憩場所は整備していますか?
□ 冷房を備えた休憩場所・日陰などの涼しい休憩場所を設けましょう。
□ 氷、冷たいおしぼり、水風呂、シャワーなどの身体を適度に冷やすことのできる物品や設備を設けましょう。
 3.計画的に、熱に慣れ、環境に適応するための期間を設けていますか?
□ 労働者が熱に慣れ、環境に適応しているか確認し、適応していない場合は、高温多湿の環境での作業時間を少しずつ長くしましょう。
□ 夏休みなど長期の休み明けは、熱に対する慣れの度合いが低下している可能性があることにも注意しましょう。
 4.のどの渇きを感じなくても、労働者に水分・塩分を摂取させていますか?
□ トイレに行きにくいことを理由として労働者が水分の摂取を控えることがないよう、労働者がトイレに行きやすい職場環境を作りましょう。
□ 水分や塩分の摂取を確認する表の作成、作業中の巡視での確認などにより、水分や塩分の摂取の徹底を図りましょう。
5.労働者に、透湿性・通気性の良い服装や帽子を着用させていますか? 
□ 熱を吸収する服装、保熱しやすい服装は避け、クールジャケットなど通気性の良い服を着用させましょう。
□ 直射日光下では、通気性の良い、日よけ布や帽子(クールヘルメット)などを着用させましょう。
6.日常の健康管理など、労働者の健康状態に配慮していますか?
□ 朝礼などの際には、睡眠不足、前日の飲酒、朝食の未摂取など、熱中症の発症に影響を与える恐れがある常 態かどうかを確認しましょう。
□ 高温多湿の作業場所での作業終了時に労働者の体温を測定し、必要に応じて濡れタオルなどにより体温を 下げるように努め、体温が下がることが確認できるまでは、1人にしないようにしましょう。
 7.熱中症を予防するための労働衛生教育を行っていますか?
□ 労働者にも、体調の以上を正しく認識できるよう、雇入れ時などに教育をするとともに、朝礼などの際にも繰り返し教育しましょう。
8.熱中症の発症に備えて、緊急連絡網の作成などを行っていますか?
□ あらかじめ、緊急時にただちに熱中症に対応できる近隣の病院、診療所の情報を把握のうえ、緊急連絡網や  救急措置の手順を作成し、関係者に周知しましょう。

※1 WBGT値とは熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された暑さの指数で、通常の気温とは異なります。一般的に暑さ指数が28°を超えると熱中症患者が著しく増加する傾向にあります。

※2 WBGT測定器は様々な仕様のものがありますが、厚生労働省が推奨しているのは黒球付きの測定器です。

社内に労働衛生教育のノウハウがないときは、外部委託をするのもひとつの手段

先ほど解説したチェックリストのなかで、熱中症を予防するための労働衛生教育を行っていますか?という項目がありましたが、「そうは言っても教育のノウハウなんて無いし、どうすれば良いのか…」とお悩みになる方が多いのではないでしょうか。

厚生労働省のホームページで、熱中症やその他の労災事故を予防するためのマニュアル等は入手が出来ますが、その内容を全て落としこんで社内で徹底するのは、労力と時間が必要だと考えられます。

そのような時は、社労士や労働衛生コンサルタントに相談をし、安全大会で講演をしてもらう、管理職向けにセミナーを開催するなど、その道のプロに任せるのもひとつの手段と言えます。
また、最近では民間の保険会社(主に損害保険)でも、同様のサービスを行っています。

この様に、いくつか方法がありますが、あなたの会社にとってベストな方法で社内教育を行い、安全な職場作りをしていくと良いでしょう。

※ 一般社団法人 日本労働安全衛生コンサルタント会

1-3.働く人、個人でも予防策を意識しましょう

ここまでは、会社の視点から熱中症の予防策を解説してきました。
しかしながら、予防策をすべて会社任せにするのではなく、自分の身を守るため、個人でも予防策をしっかりと意識することが大切です。

例えば・・・
建設業界で働く人に向けて、厚生労働省の熱中症対策マニュアルのなかに、自己点検ができるチェックシートがあります。
このように自分の健康状態を把握し、仕事に望むことも熱中症の予防に繋がるでしょう。

チェック

※ 出典 厚生労働省 職場における熱中症対策マニュアル

そして【仕事を休む勇気】を持つこともひとつの予防策だと言えます。
「会社のために!」と暑い中、無理をしてがんばりすぎた結果、熱中症で倒れ、労災事故になってしまった…
これでは会社としても、働く人としてもマイナスな要素しかないですよね。

職場環境によっては、「休み辛いな…」「休むと印象が悪くなる」など、そのような感情もあるかと思います。しかし、万が一の事態が起きてからでは遅いので、自分の体の状態をしっかりと把握し、「危ないかも」と思ったときは、勇気を持って仕事を休むことも大切です。

2.職場で熱中症が発生した時の対応方法

ここまでは熱中症の予防策を解説してきました。
しかしながら、万全に対策を講じていても、職場で熱中症を発症する可能性が0になるとは限りません。
ここでは、万が一職場で熱中症が発生してしまったときの対応を解説していきます。

熱中症の症状を改めて整理する

熱中症の症状はⅠ度からⅢ度まであり、度数別の主な症状は下記表の通りです。
表から分かる通り、Ⅲ度は非常に危険な状態であることを指します。
また、「Ⅰ度の症状だからひとまずは安心か」という考えは非常に危険ですので、少しでも熱中症を疑う症状が見られる時は直ちに対応し、症状が悪化しないように努めることが得策でしょう。

熱中症2

※ Ⅰ度の症状の【失神】は一見すると危険な状態に見えますが、ここで言う症状は、一時的に気を失い、すぐに意識が回復する状態のことを表しています。

熱中症の疑いがあるときの対応方法

働く人が仕事中に熱中症の疑いがある、と気づいたときは下記のチャートを参考に対応をすると良いでしょう。
※ 熱中症の症状では無くても、体調が悪化した場合は、必要に応じて救急隊を要請するなど、対応をすることが重要です。

熱中症3

※厚生労働省労働基準局 熱中症を防ごう!の資料を参考に作成

また、緊急の事態に備え、事業所や作業現場近くの病院をあらかじめリストアップしておくことも大切です。
そして、リストを作成する際には、近隣に労災の指定病院があるかどうかも確認をしておくと良いでしょう。
理由としては、労災の指定病院を利用することでその場でお金を払うこと無く治療を受けることが出来るからです。

しかしながら、症状によっては一刻を争う事態もあるでしょうから、状況に応じてすぐに診察をしてくれる近くの病院を利用しても良いでしょう。その病院が労災の指定病院でないときは、後で申請をすることで払った治療費は返ってきます。

※ 病院の検索ツール

・ 病院検索JAPAN
・ 労災指定病院検索

まとめ

熱中症の予防策をいくつか解説をしてきました。

ここで紹介をした予防策をベースに、あなたの会社にあった予防策を立て、熱中症の発生を少しでも減らすことができると幸いです。

また、予防策は考えることがゴールではなく、会社内や従業員に周知徹底することが大切です。
「自分は大丈夫だから、みんな大丈夫だろう」や「今まで熱中症になったことがないから大丈夫だろう」などの考えは非常に危険です。
暑さの感じ方に個人差はありますが、このような意識を無くすことも非常に大切だと考えられます。

ぜひ、この記事を社内で回覧してみてください。

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