労災保険

交通費を労災保険に請求する方法とそのポイント

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労災保険は怪我を治療するための費用や、仕事を休んだときの補償が貰える、というイメージがありますが、交通費も補償の対象となることを知っていますか?

治療をしていくなかで、通院の回数も多くなれば、それに伴って交通費の負担も増え、意外と出費が多くなってしまい、「治療費は労災保険から出るとしても、地味に財布が痛いなぁ」ということもあるのではないでしょうか?

実は、労災保険が定める条件に当てはまるとき、あなたが今まで立替えをしていた交通費が補償される可能性があるのです。

この記事では、あなたが負担した交通費が補償の対象になるかどうか、労災保険に交通費を請求する方法を解説していきます。
交通費がかさんでしまっている方、これから交通費の負担が増えてしまいそうな方はぜひお読みください。

1.交通費が補償の対象となる条件

交通費が補償の対象となる原則と3つの条件

労災保険の補償対象になる交通費には条件があります。
まず原則として、【怪我や病気をした人の家、または会社から片道2km以上の通院】であること、それに加え、下記①〜③のいずれかに当てはまる場合に対象となります。

①同一市町村内の適切な病院へ通院したとき。

※適切な病院とは、怪我や病気の治療に適した病院のことです。例えば…骨折→整形外科等→◯ 骨折→内科等→☓

②同一市町村内に適切な病院がないため、隣接する市町村内の病院へ通院したとき。

※適切な病院があっても、隣接する市町村内の病院の方が通院しやすいとき等も含まれる。
例えば…市内の病院に行くためには山を2つ超えなければ行けない等

③同一市町村内にも、隣接する市町村内にも適切な病院がなく、越境した最寄りの病院に通院したとき。

この様に条件が定められており、通院に掛かった交通費がすべて対象となるわけではないので、注意が必要です。
例えば、あなたが住んでいる町内に治療ができる病院があるにも関わらず、『隣の県に〇〇の名医がいる!』という理由で県をまたいで通院しても、そのための交通費は対象になりません。

また、原則に2km以上の通院、とありますが、これには例外があります。
体の状態により、2km未満でもバスなどの交通機関を使わなければ通院できない、と労基署が認めるときは補償の対象となります。

※ 例えば…両足を骨折して自力で歩けず、車イスを使い、バスなどに乗って通院しているとき等

2.補償対象となる交通費の種類と注意点

2-1.バス・電車などの公共の交通機関を利用したとき

労災保険の補償対象となる交通費は、原則として電車・バスなどの公共の交通機関を使ったときの費用です。
公共の交通機関を利用したとき、領収書の添付は必要ありませんが、請求の漏れがないように、掛かった費用と回数をしっかりと把握しておくことが大切です。

2-2.マイカーを使用したとき

通院のためにマイカーを利用したときも、補償の対象となります。
計算方法はkmあたり37円ですので、手厚い補償とは言えませんが、補償の対象となることを知っておいても損はないでしょう。
マイカーを使用する時は、実際に何km走ったのか、把握をしておきましょう。

2-3.タクシーを利用したとき

例外として、タクシーを利用しても対象となるケースがあります。
それは医師が『公共の交通機関を使うことが難しい』と判断した場合、タクシー以外に使える交通機関がない、などの条件をクリアするときです。
そしてタクシーを利用する際は、下記の点に特に注意が必要です。

①個人の判断で利用をしないこと

一見、条件に当てはまりそうでも、対象となるかどうかの判断は労基署が行います。
そのため、どうしてもタクシーを使わなければ通院できないときは、事前に労基署や医師に相談をしましょう。
労災保険から交通費が出ると思い、散々タクシーを使ったあげく、補償の対象にならない、なんてことが起こると経済的な負担がかなり大きくなるでしょうから、十分注意をしてください。

②領収書を必ず控えておくこと

電車・バスなどの交通費を請求する際には領収書が不要ですが、タクシー代を請求するときは領収書の添付が必須です。
タクシーを利用したときは領収書を貰うことを忘れないようにしましょう。

③負担したタクシー代の全額が対象となるわけではない

労災保険ではタクシーを利用したときの交通費について「必要と認められる限度で交通費を補償する」としているため、労基署が不要だと判断した部分については補償の対象とならないことがあります。
※例えば…高速に乗る必要がないのに高速料金が掛かっている、など

3.補償の対象になる期間

対象となる期間は怪我や病気が治癒(症状固定)するまで

交通費が補償の対象となる期間は、怪我や病気が治癒(症状固定)するまで、とされています。

※治癒(症状固定)とは

労災保険では医師の判断により、治療を続けても改善の見込みがないときも『治った』とされます。このことを治癒(症状固定)と言います。

例:骨折をした箇所の骨はくっついた→『寒い日に痛む』などの症状が残っているが、治療を続けても改善される可能性は低いため、治癒とされた。

 ここで注意が必要なのが、後遺障害が残った場合です。後遺障害の認定は症状固定の後に行われるため、残念ながら、後遺障害のリハビリなどに要した交通費は対象となりません。

詳細はこちら・・・労災の後遺障害認定をスムーズに申請するための手引書

しかしながら、労災のアフターケアの対象になるような重い障害が残った際には、アフターケアの通院費は対象になります。

詳細はこちら・・・知らないと損をする〜労災保険のアフターケア制度〜

4.労災保険に請求する方法

これまでは、交通費が対象となるための条件や、種類を解説してきました。
では、実際にどうやって交通費を請求するのか?とお考えかと思います。
そこで、この章では労災保険に交通費を請求する方法を解説していきます。

様式は治療費の請求用紙を使用する

交通費を労災保険に請求する時は、治療費の請求用紙と同じものを使います。

● 仕事中の怪我や病気のときは様式第7号
● 通勤中の怪我や病気のときは様式第16号の5

それぞれ、【移送費】という欄に距離や回数を記入します。

また、労災保険の申請は会社に労災担当など窓口がある時は、そこに依頼をしても良いですし、個人で行うこともできます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。保存版!悩まずに労災申請の手続きを行うための手順書

病院選びで困ったら労基署に相談をしましょう

ここまで解説をしてきた通り、交通費の請求には、距離と手段がポイントになってきます。
通えそうな病院が多くあるために悩んでしまう、近くにまったく病院が無くてどうすれば良いかわかならい、など、悩んでしまうときは、労基署に問い合わせをしてみましょう。
そうすると管轄内で、交通費の補償対象になる病院を教えてもらえるので、病院選びで悩んでしまうときは、労基署に相談をすると良いでしょう。

まとめ

交通費が労災保険の補償対象となる条件、請求の方法を解説してきました。
労災保険で交通費が補償の対象になることは、意外と知られていないかもしれません。
金額の大小は問わず、怪我や病気をしたうえに、交通費を負担することは、気持ちの良いものではないかと思います。
もし補償の対象になる可能性があれば、請求をしても損は無いので、ぜひ請求を進めてみてください。

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