労災保険

過重労働とは過労死や過労自殺等の労災トラブルを招く悲劇の入り口

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普段から過重労働という言葉に聞き慣れていますよね?

過重労働とは、日々の業務が忙しく、残業や休日出勤が増え続けることによっておこる長時間労働のことで、月の残業や休日出勤時間が100時間を越えることは当たり前の労働者もいます。

しかし、長時間の残業などで、過重な労働時間が続くと、脳・心疾患や精神疾患(うつ病)を発症するリスクが高まり過労死まで招く、労働者の健康管理にとって大変重要な問題となっています。

過重労働から引き起こされる過労死で、労災認定が増え続けている中、労働者への面接指導や健康障害防止のためのチェックなどの過重労働対策が不可欠とされています。

しかしながら、過重労働の対策をどう行っていっていけばよいのか具体的な内容がイマイチわからないと悩んでいる方の為にこの記事を書きました。

そもそも過重労働とはなんなのか、またその過重労働によって起こった裁判事例や長時間労働にさせない為の具対策についてまとめてみましたので、ぜひ最後まで読んでください。

1.法定労働時間と過重労働の関係を知ろう

労働基準法で定められている法定の労働時間は次の通りです。

①1日に8時間、1週間に40時間の労働
②労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩
③少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日

これを超える労働時間が残業となり、この時間外労働、休日出勤労働の時間が過酷になると、長時間労働(残業が1ヶ月45時間超。または過去2〜6ヶ月の平均80時間超える者)となります。

このような長時間労働で過重な労働が続くことが、過重労働と言われています。

この時間外労働・休日労働時間が、月100時間超または過去2~6ヶ月平均で月80時間超えると健康障害(脳・心疾患やストレスからの精神疾患など)を発症するリスクが高まり、この過重労働は、会社の健康管理にとって大変重要な課題となっています。

2.違法な過重労働が認められた3つの代表例

2-1.36協定の不届けの残業は違法。労働基準監督署が書類送検した事例

道路貨物運送業を営む会社及びその代表者を,労働基準法違反の容疑で東京地方検察庁に書類送検した
〈事件の概要〉
同社所属のトラック運転手が,建築資材を輸送途中の高速道路パーキングエリア内において意識不明の状態で発見され,翌日死亡したもの。
労働基準法では,法定労働時間を1週40時間,1日8時間と定めているところ,時間外労働に関する協定を労働基準監督署に届け出ていない状態で,運転手に法定労働時間を超えて,1か月当たり127時間30分の違法な時間外労働を行わせていた。

36協定については別記事参照・・・「36(サブロク)協定とは何か?知っておきたい基礎知識

2-2.過重労働の結果、心筋梗塞発症!労働基準監督署が労災認定した事例

労働者Aさんが発症した心筋梗塞は、発症前1ヶ月間に100時間の時間外労働が認められ、過重労働が原因であるとして、労災認定された
〈事件の概要〉 
ある朝、自宅の浴槽で倒れていたところを発見され、通報を受け救急隊により病院へ搬送されるも死亡が確認された。マンション建築現場の施工管理者として勤務していたが、工事の進捗の遅れを取り戻すために時間外労働が連日夜10時頃までに及び、1ヶ月当たり約70時間の時間外労働が続いていた。さらに当月には、工事が集中していたため早朝から深夜までの勤務が続き時間外労働が1ヶ月100時間を越えていた。

2-3.過重労働が元で急性心不全により死亡!民事訴訟が提訴された裁判事例

労働者Bさんの急性心不全による死亡は、会社の安全配慮義務違反との相当因果関係があるとして、会社と会社役員が遺族に対し、安全配慮義務違反として多額の賠償金を支払うことを認めた。
〈事件の概要〉
労働者Bさんが4月に入社し、同年7月までの間、繁忙期でもないにも関わらず、4ヶ月に渡って毎月80時間を超える(1ヶ月100時間を超えるあるいはそれに近い)時間外労働(最大約140時間)を行った。その結果、同年8月に、急性心不全により死亡した。

昨今、2-1のように過重労働について厳しく取り締まるようになったのは、2-2、2-3のような過重労働と過労死・うつ病などの精神疾患に密接な完成があるからです。

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厚生労働省HP一部抜粋

上記の図に記載してあるように、違法な過重労働は会社にとって重大なペナルティーが発生してしまいます。
刑事罰が与えられたり、ブラック企業と公表されてしまったりします。

過労死が労災認定とされれば、会社に安全配慮義務違反で訴訟になることは、間違いないでしょう。

訴訟などになった場合、損害保険で、損害賠償金や裁判費用などの多額の賠償金を埋めることはできますが、会社の評判や信用まではすぐに埋めることはできません。

つまり、あなたの会社の存続が脅かされる由々しき事態となるのです。
それでは、このような事故、事件が起こらないようにどのような対策をすべきか解説します。

3.過重労働による労災事故を防ぐために行う5つのチェックポイント

過重労働を防止するために、まずは5つのポイントをチェックしてみましょう。

3-1.36協定は限度基準などの適合したものになっていますか?

・ 36協定(時間外労働・休日労働)で定める時間限度内に適用しているか?
・ 36協定の延長時間を変更しても、健康障害防止の観点から時間外労働は月45時間以内に勤める
・ 休日労働についても削減につとめる

3-2.労働時間を適正に把握していますか?

・ 労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、記録する
 * 「労働時間の適正な把握のために使用者が構ずべき措置に関する基準」

ノー残業デー、ノー残業ウィーク、PCの強制シャットダウンなどによる早く帰る職場環境の定着を行う。

3-3.年次有給休暇の取得を促進していますか?

・ 労働者ごとに、年次有給休暇の取得状況の把握をする。
・ 年次有給休暇を取得しやすい職場環境の雰囲気をつくり定着させ、取得促進を図る。

3-4.産業医や衛生管理者などを選任していますか?

・ 労働者の健康管理のため、産業医や衛生管理者、衛生管理者を選任し、その会社での健康管理に関する職務を適切におこなう 
常時50人以上の労働者を雇用する事業場 産業医・衛生管理者
常時10人以上50人未満の事業場 衛生推進者または安全衛生推進者
産業医を選任する義務のない事業場 地域産業保健センターの活用

3-5.衛生委員会などを設置していますか?

・ 衛生委員会 などを設置し、「長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること」をはじめ健康管理について適切に調査審議をおこなう

上記は会社の立場として行う5つのポイントです。
ここで注意しなくてはならないことは,いくら産業医を配置した、衛生委員会を設置したとしてもそれらが機能していなければ何の意味もありません。

大切なことは、従業員の声を聞く場所を作るということです。
ここに長時間労働者への対応事例をまとめてみました。

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厚生労働省HP一部抜粋

まとめ

過重労働とは、過酷な長時間労働により、労働者が過労死や過労自殺までに発展してしまいます。
そうなれば、会社に安全配慮違反で訴訟や送検事案になることは、間違いありません。
そればかりか、会社の存続まで危ぶまれます。
過労死、過労自殺をめぐる労災認定が増え続けている昨今、今一度、職場環境や、過重労働の対策について見直す必要があるでしょう。

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