損害賠償

企業が勝訴した未払い残業代トラブルの判例

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残業代をめぐってのトラブルは労働問題の中でも大半を占めています。
未払い残業代については、企業に対して法律上、罰則が設けられています。
また、裁判ともなれば倍額以上の支払いをしなくてはならない恐れがあります。

適正な残業代を支払うことは企業としては当然のことですが、労働時間についての認識が従業員と企業側との思い違いがあり、近年では、未払い残業代をめぐって、頭を抱えている企業も多いのではないでしょうか?

この記事では未払い残業代を巡っての裁判で、企業が勝訴した事例をご紹介します。
そこから、従業員からの未払い残業代請求の対策を学んでいきましょう。

1.従業員からの未払い残業代請求で企業が勝訴した判例

さっそく、企業が勝訴した判例を見ていきましょう。

1.神代学園事件 (平成15年12月9日東京地方裁判所判決)
【概要】

従業員の請求

従業員は、残業禁止命令が出た後も、仕事の量が定時(所定の時間)に終えることができる量ではなかった。として、タイムカードの打刻時間を労働時間として未払い残業代を請求しました。

会社側の反論

学校側は、「教員に対して時間外労働をせず、終業時刻後に仕事が残っている場合は管理職に引き継ぐことを命じていた」として、残業禁止命令を出した後の残業は学校側の指示によるものではないと主張しました。

裁判所の判断

裁判所は、「使用者の具体的な残業禁止命令に反して、業務を行ったとしても、これを労働時間と解することは困難である」として、残業禁止命令後の残業代の請求を認めませんでした。
労働基準法上の管理監督者に該当するかどうかの判断基準
判断基準1: 該当の管理職に人事面などに労務管理について重要な権限があったか 
判断基準2: 該当の管理職が経営方針などに関与する権限があったか
判断基準3: 該当の管理職の出退勤について自身に裁量がある程度あったか
判断基準4: 該当の管理職が相応の待遇を受けていたか

こうした基準を満たしていない管理職に対しては、裁判所では管理監督者にあたらないとされ、未払い残業代の請求が認められる可能性が高くなります。

そのほかにも未払いを残業代の請求をめぐって、下記のように企業側の主張が認められた事例があります。

・ 固定残業手当をあらかじめ給与の盛り込んで毎月支給している会社
・ 残業代請求について消滅時効が完成している
など・・・

消滅事項について聞きなれない方のためにすごく簡単に端折っていうと…

「残業代請求について消滅時効が完成している」
=「従業員が残業代請求できるのに、請求できる期間中に請求せずほったらかしていたから、請求する権利が無くなってしまった。」

細かい話はありますは、ここではザクっと権利って時間が経てば消えるんだなぁと知っていただければと思います。
では未払い残業代請求のの消滅時効とは何年で完成するものなのでしょうか?

1-2.未払い残業代の時効

残業代については、給与支払日の翌日から2年で消滅時効にかかります。
例えば、毎月末締め翌月10日払いで月給を支払う会社では、残業代についても毎月末締め翌月10日払いとなりますよね。

そのため、平成28年4月分の残業代は平成28年5月10日が支払日となりますので、平成30年5月10日の経過で2年が経過し消滅時効が完成します。

2.未払い残業代の罰則

先ほどまでは、従業員からの未払い残業代を請求されたときにどう反論していくかということを説明していましたが、この章では従業員の主張が認められた時はどうなってしまうのかということについて説明していきます。
従業員からの未払い残業代請求の主張が認められてしまうと企業に対して次のような支払い命令が下されます。

1. 付加金制度
裁判所で未払い残業代が悪質と判断された場合、「付加金」の支払いを命じられることがあります。
その金額は最大で本来の残業代の額と同額までとされています
2. 遅延損害金
未払い残業代について、未払い残業代を元本として
その従業員が
・まだ在職している間は年6%
・退職後は年14.6%
の遅延損害金がつきます

未払い残業代の裁判に企業が負けてしまうと、本来の残業代だけではなく上記のような支払を負うことになる場合があるのです。
付加金を最大に課されてしまった時を想像してみてください。
本来の残業代と付加金をあわせて、本来の残業代の2倍の金額になってしまいます。

未払い残業代請求で企業側が負けてしまったとき、いくら支払を命じられたのか見てみましょう

1.康正産業事件 (平成22年2月16日鹿児島地方裁判所判決) 732万円
2.エイテイズ事件 (平成20年3月27日神戸地方裁判所尼崎支部判決) 719万円
3.育英舎事件 (平成14年4月18日札幌地方裁判所判決) 360万円

 企業側の反論が認められるのは、あくまで適正な賃金の支払いをしていた場合です。
やはり、支払うべきものを支払わずにしていた場合は、相応のツケが回ってくるということを肝に銘じておきましょう。

まとめ

適正な労働時間に対して、適正な賃金を支払うのは企業としては当然のことです。

この記事では、乱発している未払い残業代を巡る企業側の判例を紹介しました。
近年は、様々な労働系裁判では労働者側を守る動きになってきていますが、未払い残業代に関して企業がしっかりと対策していれば、企業側でも勝てるということがお分かりいただけたかと思います。

裁判となれば、命じられた支払金額だけでなく弁護士費用など訴訟に対応する費用もかかります。
そうした万が一の費用のことも日頃から考えておきたいですね。

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