損害賠償

訪問介護中の自転車事故が高額賠償に?〜第三者との事故編〜

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あなたの会社では、訪問介護中の自転車事故に備え、しっかりと対策を取っていますか?

もし、訪問介護の移動や通退勤に使う自転車で事故を起こすと、数千万単位の高額な訴訟につながることもあるため、会社として対策を講じておくことが必要なのです。

実際に訪問介護の現場では、自転車は小回りも効き、手軽に運転できるため移動手段として使用するヘルパーさんも多いかと思います。しかしながら、手軽に使える反面で事故が起きたときのリスクが非常に高いことは、意外と見落としがちです。

昨今のニュースや各種メディアによる自転車事故の報道や、自転車保険加入の義務化などを耳にされている経営者の方は何となく『危ないなぁ』とお考えかもしれません。

この記事では、なぜ自転車事故が高額な訴訟に繋がるのか、そしてその時に備え、どのような保険が必要なのかを解説していきます。

1.自転車事故は高額賠償を呼び起こし、会社は危機に陥る

記事の冒頭でもお伝えした通り、自転車は手軽に使える便利な手段ではありますが、時として人に大怪我をさせてしまう、非常に危険な刃と成り代わってしまいます。

実際に考えられる事故は大きくわけて2つあります。

1つ目は自転車で人をひいてしまった場合、いわゆる『対人事故』というものです。

そして2つ目は、スタッフ自身がケガをしてしまった場合の労災事故から発展する『労災訴訟』です。

どちらの場合でも会社にとても重い責任がのしかかり、多額の損害賠償金を負担することになるのです。

今回の記事では1つ目の対人事故による高額賠償に注目して解説をしていきます。

※労災訴訟については次回、別の記事で解説をしますのでそちらをご覧ください。

1-1.自転車事故は数千万円という高額賠償になり、会社のキャッシュフローに影響する

まずはこちらの図をご覧ください。
※国土交通省発行 自転車事故の損害賠償に係る現状について より抜粋

注目をしていただきたいのは、【賠償額】の部分です。

一目瞭然ですが4,746万円〜9,521万円という非常に高額な損害賠償の支払い命令が裁判所から下っているのです。
また、被害内容に目を向けると死亡に比べ、後遺障害の方が高額になっていることがわかります。

死亡の方が高額なのでは?とイメージしてしまいがちですが、これは【将来の介護費用】が加算されているためです。
表の一番上にある賠償額9,521万円の事故では、約4,000万円が将来の介護費用、と報道されています。

もし、あなたの会社でお勤めのヘルパーさんがこんな事故を起こしてしまったら、どの様に対応しますか?

【通退勤中の事故であっても会社が責任負わなくてはいけない】

よく通勤や退勤のときに起きた事故は個人の責任でしょ』と耳にすることがあります。

しかしながら、通退勤のときに起きた事故は必ず個人が責任を負う、というのは皆さまが勘違いされている点です。
国土交通省が発行する下記資料によると、ご覧の通り事業者(会社)の使用者責任が問われ損害賠償責任を負うことになる、と書かれています。

自転車通勤導入に関する手引き より引用

つまり、先に解説したような高額な損害賠償を会社が負うことも十分あり得るのです。

例えば下記のようなケースだと会社にも責任が及ぶことが考えられます。

例 ヘルパーAさん、いつも自転車で事業所に行き、事業所から訪問先に向かう。

  • ヘルパーのAさんはいつもと同じ様に自転車で事業所に向かっていた。
  • その道すがら、急ぎで向かってほしい訪問先があるため、直接現場に行って、と上司から指示を受けた。
  • 上司からの指示に従い、直接訪問先に向かっている最中に歩行者をはねてしまった。

この例であれば、通勤中に上司からの指示を受けて起きた事故、ですから【事業活動中】とみなされる可能性は高いと考えられます。こうなってしまうと、会社に責任はない!と胸を張って言えないですよね。

似たようなケースとして【休日に緊急で呼び出しをうけ出勤】が挙げられます。訪問介護の現場ではよくありそうな出来事ではないでしょうか?
この場合、業務としての意味合いが強くなり、会社に責任が生じることとなります。

【怒りの矛先は会社に向けられる】

また、最初は個人に責任がある、と判断され個人に損害賠償の請求が起こったとしても、本人に支払い能力が無ければ雇っている会社に請求する、ということもあります。

少し尖った表現ではありますが、被害者の心理として取れるところから取るという思考になりがちですので、

『個人から賠償されないのであれば、勤め先に責任を負ってもらう!』と怒りの矛先を変えてくるのです。

【会社が責任を逃れることは難しい】

従業員が事故を起こしてしまっても、会社は常に責任を負うわけではありません。
しかし、そのためには下記3つの項目をすべてクリアする必要があり、いささかハードルは高いように考えられます。

・事故の内容をみて、従業員に落ち度がないこと

・従業員に対して注意喚起、安全管理を徹底していること

・注意喚起、安全管理を徹底していたのに起きてしまった事故であること

例えば2つ目の項目であれば、

・定期的に自転車運転に関わる安全講習会を開催し、参加を必須としている。

・極力自転車を使わなくて済むよう、交通費の支給要件を緩和している。

などが挙げられます。

そして、上記で挙げたようなことを十分に証明(立証)できない限りは会社が責任を逃れることが難しくなり、被害者に対して損害賠償をすることになります。

このことから、会社も万が一の高額な賠償に備え、しっかりと準備・対策をしておく必要があることがお分かりかと思います。

では高額な損害賠償から会社を守るために、どの様な保険が必要なのか、解説を続けていきます。

1-2.仕事中の賠償責任保険に加入することで高額な賠償に対応できる

自転車事故による損害賠償は、ズバリ【仕事中の賠償責任保険】で対応することができます。
この保険では、

・被害者への損害賠償、お見舞金、

・裁判費用・弁護士費用

などが補償されるものです。
恐らく、訪問介護を生業としている会社であれば、介護サービス中の事故に向けて保険に加入しているはずです。

もし加入をお済ませでない場合は、莫大な損害賠償請求が来た際に会社が全てダメージを受けてしまうため、早急に保険代理店に相談し手続きを進めましょう。

【賠償責任保険は介護サービス中だけの事故ではなく、事業全体をカバーする保険】

介護ビジネスの場合、どうしてもサービス提供中の事故に対しての保険と考えてしまいがちですが、そうではありません。

基本的には事業全体をカバーする保険ですので、自転車移動中の事故や、自転車を使ってポスティングをする、
などの営業活動中に起きた事故でも対象となります。

そのため、少しでも事業に自転車を使う場合は必要な保険であることがお分かりかと思います。

【補償額が1億円では足りない時代になったため、1億円以上の補償を用意する】

今までは、賠償責任保険は1億円の補償が必要とされていましたが、2020年4月に民法の改正が施行され、1億円では不十分な時代になりました。

こちらの図は法務省が発行した資料から抜粋したものです。ここから1億円の補償では安心できないことがわかります。

すでに保険に加入している方は補償額を確認いただき、1億円以下であれば補償の見直しを進めましょう。
また、これから保険に入る方は、必ず1億円以上の補償を用意するようにしましょう。

【補償額を増やしても大きく保険料には影響しない】

 もし、1億円の補償を3億円に見直したとすると、補償額は3倍に増えますよね。そうなると『保険料も3倍に!?』とお考えになるかもしれませんが、実際にはそうではありません。

保険会社によって様々ですが、概ね1.2〜1.5倍ですので、補償額を見直すために二の足を踏む必要はありません。

ここまでは、会社の責任が問われた際に対応できる保険を解説しました。
ここで少し話を戻します。

まず、『従業員個人が対応できない』から、会社に怒りの矛先が向く、とお伝えをしてきました。
つまり『従業員個人が対応できる』仕組みを会社が用意しておくことで、会社が矢面に立つ場面を減らせる可能性が高まります。

具体的には【会社で個人の保険を管理する】という方法です。

1-3.従業員個人の自転車保険等も会社で管理し、万全な状態を作る

まず、個人の保険を管理する方法は2つあると考えられます。

1つめは、従業員に自転車事故を補償できる保険の加入・保険証券の提出を義務付けることです。

個人で入るケガの保険、火災保険、自動車保険などに特約として【個人賠償責任保険】がついていれば自転車による事故が補償できますので、その点を確認することが必要です。

また、最近ではスマートフォンで手軽に加入できる自転車保険なども普及されているため、信頼のおける保険代理店に相談しましょう。

※例えば従業員全員に案内できるチラシを用意してもらう、など

2つめは、会社で従業員個人をまとめて補償できる保険に入ることです。

個人賠償責任保険を会社でまとめて加入する方法もあるため、従業員ひとりひとりに保険の加入を義務付けるより手間は掛かりません。保険料は会社負担となりますが、会社と従業員を高額な損害賠償からしっかりと守るためには必要なコストだと考えられます。

また、事故が起きた際に会社が矢面に立つことは避けられないため、【個人に加入を義務付ける】という方法より、会社として保険に入り、会社として対応できる、こちらの方法がより良い手立てだと言えます。

【個人の保険に頼らず、会社として企業防衛をする】

ここでは個人向けの保険を紹介しましたが、そこに全てを委ねてしまうのは非常に危険です。
被害者が個人を飛び越えていきなり会社を訴えてくることも十分あり得ますので、

・会社を守るための賠償責任保険

・従業員個人を守るための賠償責任保険

が企業防衛に必要な保険であると言えます。

まとめ

訪問介護中の自転車事故がいかに危険であるか、そして事故から会社や個人を守る保険を解説してきました。

日本全国をみても自転車保険の加入が義務付けられたり、自転車による悲惨な事故がニュースで取り上げられたり、嫌な話題として耳に残ることがしばしばあります。

もし、あなたの会社の従業員が人の生死に関わる事故を起こしてしまったとすると…その後に待ち受ける負の連鎖は想像するだけで非常に気持ちが沈んでしまうのではないでしょうか。

経済的なリスクや、事故の対応に負われ仕事がままならない、被害者や遺族にどの様な言葉をかければいいのか?など、経営者として悩みのつきない毎日になってしまいます。
その悩みを解決するため、安心して仕事をしていくためにも、今回解説をした保険は必要なものです。

あなたの大切な会社、そして従業員を守るために、ぜひこの機会に加入している保険の整理をしてみてください。そして、少しでも不安に感じることがあれば、信頼のおける保険代理店に相談し、その不安を解消して事業を継続していただけると幸いです。

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