労災保険

あなたの怪我や病気は労災か?抑えておくべき認定基準のポイント

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あなたが仕事中のケガ、仕事を原因とする病気で労災の申請をするとき、気になるのは認定の基準かと思います。
また、会社の労災担当に「これ程度のケガでは労災にならないよ」など言われてしまい、どうすれば良いのかわからず、悩んでいるのでは無いでしょうか?

ケガや病気で身体的に辛いことに加え「労災として認められるのか」と考えると、精神的にも辛くなってしまいますよね。

この記事では、そのような悩みを解消するために、労災の認定基準を解説していきます。
ひとえに「労災」といっても状況により認定の基準は異なります。
そして、あなたの状況に合う部分を読み進めることで安心を得ることができます。

また、万が一労災として認められなかったときにどうするべきか、も解説をしていくので、認定基準について不安や疑問を感じている方は、ぜひお読みください。

1.労災かどうかを決めるのは会社やあなたではなく、労基署である

労災の申請を会社に依頼した時に「この程度のケガは労災にはならないよ」と言われた経験がある、という話をよく耳にしますが、これは大きな間違いです。
あなたのケガや病気を労災かどうか判断するのは労基署ですので、例え会社に「これは労災ではない」と言われてもそれを鵜呑みにする必要はありません。

会社が労災の申請に不慣れであるとか、仕事の都合上、労災をあまり使いたくない、という理由で、「労災じゃない」としている可能性も考えられます。

しかしながら、労災保険は働く人を守るための制度ですので、「会社に言われたからやむ無く健保を使うか」などはあってはならないことです。
しっかりと申請を進め、労基署に適切な判断を仰ぎましょう。

また、申請を進めるにあたり、会社の証明(押印)や、請求をする給付金によっては、会社に資料を用意して貰う必要がありますが、どうしても会社からの協力を得られない時でも労災の申請は進められます。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。
保存版!悩まずに労災申請の手続きを行うための手順書

2.労災認定の基準

あなたのケガや病気は、以下の3つの条件を全て満たすことで労災認定されます。

1.仕事中に被ったケガ・病気であるかどうか(業務遂行性)
2.仕事がケガ・病気の原因になったかどうか(業務起因性)
3.労働者であること(役員ではなく、労災保険の対象者であること)※特別加入により対象とすることもできます。

仕事中のケガの場合

労災事故が発生したときに、ケガと仕事の因果関係がわかりやすいものであれば、労災認定を受けるのはさほど難しくありません。
例えば、作業中に機械に挟まれた、などであれば仕事が原因でケガをしたことが明確ですので、申請の書類を提出すれば、すぐにでも労災認定を受けることができるでしょう。

また、通勤災害のときは大前提として、労災保険における【通勤】の条件を満たす必要があります。
通勤の条件は以下の通りです。

1.仕事に関連する移動であること

2.住居と仕事をする場所との往復であること

3.合理的な経路、方法であること

4.逸脱や中断をしていないこと

この4点を全てクリアすることで、労災認定を受けることができます。
その他、詳しい内容はこちらの記事で解説をしていますので、ぜひ本記事とあわせてお読みください。

通勤災害が労災認定される為に知っておくべき大切なポイント

しかしながら、大きなケガを被ったときや、ケガをした状況が複雑なときは、認定までに時間がかかる可能性もあります。

そのような状況のもとに労災申請を行うときは、発生原因などをできるだけ詳しく書類に記載し、提出をしましょう。
また、場合によっては労基署の聞き取り調査が入る可能性もあります。その際はしっかりと事実を伝え、認定を受けるためにも調査に協力をしましょう。

もしあなたが、「認定されるまで、まだ時間がかかるのか?」と疑問に感じたときは、何かしらの原因があるはずです。あまりにも時間がかかり、もう待っていられない!というときは会社や労基署に進み具合を聞いてみるのも、ひとつの手段です。

仕事を原因とする病気の場合

病気の場合は、仕事中にケガをした場合と異なり、本当に仕事が原因であるのかどうか、判断をするのが難しいということがあります。

例えば、有害な物質を長い間扱っていたことにより、病気になった、上司からの嫌がらせでうつ病になった、という場合は仕事との因果関係を証明することが難しいかもしれません。

また、転職や部署異動などをしていた場合、どのタイミングのどの仕事が原因なのか、という判断がさらに難しくなります。

そのため、医学的な視点から仕事との因果関係が明らかにされている病気については、労災認定をするように定められており、【職業病リスト】として詳しく記載されています。 → リンク

ですから、「たぶん労災にはならないだろうな…」などと思い込み、悩んでしまう前に、職業病リストに目を通し、該当する病気であれば、労災の申請を進めてください。

ですから、「たぶん労災にはならないだろうな…」などと思い込み、悩んでしまう前に、職業病リストに目を通し、該当する病気であれば、労災の申請を進めてください。

また、うつ病や精神障害については、認定されるための条件が別途定められています。
詳しくはこちらの記事をお読みください。

うつ病で悩んでいる人に知ってほしい労災申請の基礎知識

3.労災が認定されなくても諦める必要はない

ここまでは、あなたのケガや病気が労災認定されるための基準を解説してきました。

しかしながら、何らかの理由により、万が一労災認定を受けることができなかった場合、どうすれば良いのか…と不安に思うこともあるのではないでしょうか?

そのようなとき、すぐに諦める必要はありません。
ここからは、労災の認定を受けられなかったときにやるべきことを解説していきます。

3-1.健康保険に傷病手当金を請求する

労災を申請した結果、残念ながら労災認定を受けることができなかった場合、治療費や休業補償などを労災保険から受け取ることはできません。

しかしながら、裏を返せば健康保険の対象になるため、条件を満たすことで傷病手当金を受け取ることができます。
その条件は、以下の通り4つあります。

1.仕事を原因としないケガや病気での休業であること

2.仕事をすることができないこと(医師の見解や仕事内容により判断)

3.仕事を3日間連続して休み、4日以上仕事ができないこと(待機3日間)

4.休業した期間に給料を貰っていないこと

支給される期間や、申請の方法などはこちらをご覧ください。→ 全国健康保険協会

なお、国民健康保険にはこの傷病手当金の制度がありません。
そのため、民間の保険会社が販売している、所得補償保険や、収入保障保険などに加入をしておくのもひとつの手段です。

3-2.会社や個人で加入している保険の請求を進める

会社や個人で、怪我や病気の保険に加入しているときは、そちらで請求を進めてみるのもひとつの手段です。
加入している保険の商品や、契約内容によっては請求できる保険金があるかもしれません。
保険に加入しているかどうかを総務・人事に確認してみる、個人で契約している保険があるか、確認をしてみてください。

また、経営者の方や社内で保険を担当している方は、万が一労災が認定されなかったとき、従業員を助けることができる保険があるかどうか、お付き合いのある保険代理店に問い合わせをすることをおすすめします。

労働者保護の意識が年々強くなっているため、『労災ではないから会社は関係ない』では済まされず、怪我や病気をした家族から訴えられるケースも考えられます。

そのような万が一の事態に備え、労災保険に代わる保険に加入しておくのも会社を守る方法のひとつです。

3-3.審査請求を行う

労基署が決定した認定内容に不服があるときは、2回まで再度審査をするように請求ができます。
また、2回目の審査請求をしてから3ヶ月以内に結果が出ない時は訴えを起こすことができます。
しかしながら一度決定した認定の内容が変わることは非常に少なく、審査請求をするためには、時間と手間が掛かるため、

特別な事情がない限りはお勧めできません。

最近はうつ病の労災認定を巡り、審査請求を行うケースが多く、ニュースや新聞でも取り上げられていますが、【どうしても納得できないときの最終手段】という意味合いの強いものとなっています。

コラム:会社が労災保険の加入手続きをしていなかったとき

労働者を1人でも雇う会社は、事業を始めた時点で自動的に保険が成立しています。

加入手続きをしていない、といった場合でも保険関係は成り立っており、「手続き遅れ」「保険料未納」という扱いになります。
そのため、企業側が「加入をしていない」と考えている間に労災が発生した場合も、労働者は給付を受けることができます。

つまり、あなたが会社に労災の申請を頼んだときに「労災?うちは入ってないから無理だよ!」という理由はあり得ないので、労基署に問い合わせをし、手続きを進めてください。また、こちらの記事にも手続きの方法を解説しているので、ぜひご参考ください。

保存版!悩まずに労災申請の手続きを行うための手順書

また、手続きをしていない会社は保険料をさかのぼって徴収されるなど、デメリットが発生します。
加入手続きを済ませていない会社は、すぐに手続きを進めることを強くおすすめします。

まとめ

労災の認定基準は、あなたが置かれている状況により、様々だということがお分かりいただけたかと思います。
この記事を参考に、認定基準を満たせるかどうか、状況を整理し労災の申請を進めてみてください。

そしてこの記事が、仕事中にケガや病気を被り、「ちゃんと認定されるかな?」と悩んでいる方の不安を解消する手助けになると幸いです。

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