運送業を経営される皆さんはご存知でしょうか?少し残念な話なのですが、“精神障害”や“心疾患”の労災請求件数および支給件数が全業種を通じて運送業が一番多いのです。
交通事故には気をつけなさい!と口を酸っぱくして伝えてきたけど、社員の健康管理まではできていないよ。という会社はまだまだ多いようですね。また、健康被害が原因で会社が訴えられるなんて考えたこともなかったよ。そんな会社も多いのではないでしょうか。
今回は「大切な社員の健康を守る」「大切な会社を労災訴訟から守る」を皆さんにわかりやすく解説しました。社員の健康増進がいかに労災リスクを低下させ、ひいては会社の安定に貢献するか。ぜひとも参考にして戴きたいと思います。
1.運送業が精神障害や心疾患などの労災請求件数ワースト1
実は下の表にある通り、運送業が精神障害や心疾患などで労災認定される件数が全業種を通じて一番多いのです。運送業に関係する皆さんには少し残念なデータですよね。
*厚生労働省平成27年度「過労死等の労災補償状況」より引用
しかも、H26年とH27年の2年連続で「運輸業・郵便業」の件数が一番多いのです。では、どうして運送業が多いのでしょうか?原因は幾つかあるようです。
2.改善されない過酷な労働環境が労災の増加に繋がる
運送業の労働環境の改善はだいぶ前から問題視されてきましたが、病気が原因の労災の請求件数も認定件数も増えてしまっていることは、結果として環境改善はなかなか進んでいない状況と言わざるを得ません。
2-1.“長時間労働”で“安い給料”と“休みなし”というイメージ
運送業は昔はやればやった分だけ稼げた職業イメージでしたが、今では休みが少ない、給料が少ないというイメージが強くなってしまった現状です。働き手がますます減れば、その分、働く人の負担は大きくなるのは明らかですよね。
運送業の人手不足は本当に深刻です。
労働環境が改善されなければ、このように働く人の健康被害をさらに増やすことに繋がってしまうのです。これは業界全体で取り組むべき大きな課題とも言えます。
2-2.物流業界全体で働く人の健康被害の増大には強い懸念がある
物流業界の業界専門紙「物流Weekly」(http://www.weekly-net.co.jp/)という新聞紙面でも頻繁に取り上げられている記事は、物流業界全体の労働環境を改善し、働く人の健康を会社が守ろう、適正な給料を確保できるよう働く人を守ろう、そんな記事が大変多く見られます。
病気による労災請求件数が全業種を通じて一番多い業種なだけに、業界専門紙として業界全体に警鐘を鳴らし続けているようです。
ではもし、あなたの会社の従業員さんが業務中にクモ膜下出血で倒れ、死亡した。なんてことがあると、どういうことが起こるのか。次の章で見ていきましょう。
3.従業員の病気が労災認定されれば会社の管理責任が発生する
物流業会全体でこれだけ、働く人の健康管理の大切さについて話題が飛び交う中、なかなか労働環境を改善できていない会社も少なくはないようです。
では実際に想像してください。皆さんは運送業の経営陣としてどう対処しますか?
この男性社員の奥さんや家族にどんな言葉をかけますか?「なんで父がこんな死に方しなきゃいけないのでしょうか?」息子さんからそんなことを言われたら、なんて言葉を返しますか?
3-1.男性の病気が労災認定されれば会社の責任が追及される
重要なポイントなのですが、労災認定されるということは、業務上災害として認められた わけです。
つまり同時に、「会社の管理下で起こった災害」として会社の責任が発生します 。
- 定期健康診断などで、この男性社員の健康状態を会社がきちんと把握していたのか
- 残業時間が80時間を超えるような勤務をさせていなかったか
- 心筋梗塞を発症させるような、過酷なストレスを業務上で与えていなかったか etc..
などなど、「この男性を死に至らしめた原因は会社の働かせ方にあったかどうか」 をあらゆる角度から追及されることになります。いわゆる“会社の過失” を労基署や被害者の遺族から徹底的に追及されることになります。
3-2.インターネットで情報収集が容易になり様々な“知恵”がつく
自分の父さんが仕事中に「急性心筋梗塞」で死亡した
「急性心筋梗塞 原因」などとgoogleで検索すると、「急性心筋梗塞は過度のストレスが原因で起こる」こんな記事が出てきます。
自分の父さんが生活習慣病ではなくて過度のストレスが原因で死んだとなれば、死ぬほどのストレスを抱えて仕事をしていたのか、それはそれは息子として悔やみますよね。死に方が不自然だ・おかしいと思えば、遺族は徹底的に会社側に真相を確かめたい気持ちになるのは当然ですよね。
3-3.「労災」をgoogle検索すると必ず弁護士のサイトにたどり着く
「労災」というキーワードでgoogle検索をすると、「労災訴訟の相談はお気軽にどうぞ」という弁護士のサイトに必ず遭遇します。弁護士さんのサイトはすごいですね。「必ず企業としての責任を取らせましょう!」などと強力なメッセージを掲載しているサイトもあったりします。
今は簡単に無料弁護相談もできますから、労災訴訟となれば高額な訴訟になりますし、弁護士さんだって会社の責任さえ立証すれば勝てる確率が高いのだから、ぜひやりたい案件ですよね。こうなると会社は大変不利です。
3-4.労災訴訟は遺族の感情の高まりから始まる
また、労災訴訟では遺族感情が大変重要となってきます。
会社側の対応が冷たい、悪びれた様子もない、知らん顔をしている、、、
遺族も人、会社側の対応に非人間的な一面を見出せば、それは感情的にもなります。当然、会社のことが許せなくなります。会社は敵になります。そうなると、さらに会社のことが許せないので様々な角度から訴訟額を上げてくることになります。訴額だけで2億円を超えるケースも珍しくはありません。
3-5.労災訴訟は年々高額化し会社に与えるダメージは甚大
ひとたび訴訟となれば億単位の損害賠償請求が来る時代となりました。しかも、会社の売り上げ規模に問わず高額な訴訟額となっています。
売上規模が何百億・何千億の会社が2億円払うのと、売上規模が数億、数十億円の会社が2億円払うのとでは明らかにダメージは違いますよね。
このように高額な労災訴訟に備えるためにも、会社として労災訴訟対策の保険に加入しておくという手段もありますが、何よりも自分の会社で労災を起こさない取り組みを徹底させることが一番大切ですよね。
4.労災訴訟に備え“労災の上乗せ保険”に加入しておく
そもそも労災事故を起こさないために、従業員の健康状態の管理や労働条件の改善は多くの企業の最重要課題の一つでしょう。その取り組み事例などは、物流業界の業界専門紙「物流Weekly」(http://www.weekly-net.co.jp/)などで大変多くの情報が掲載されていますので、そちらをぜひご参考ください。
当サイト「カイシャのホケン」では、企業防衛としての手段の一つとして、通称“労災の上乗せ保険”と呼ばれる保険がいかに皆さんの会社を守るかをお伝え致します。
4-1.使用者賠償責任保険が労災訴訟の時にあなたの会社を守る
過労死や過労自殺、精神病をわずらった原因が過酷な労働をさせていた会社側の責任ともなれば労災訴訟に発展する可能性はゼロとは言えません。
国内の損保各社が扱う、通称“労災の上乗せ保険”と呼ばれる保険に最近では、「使用者賠償責任保険」というものがついています。この「使用者賠償責任保険」が労災訴訟で会社が訴えられた時に皆さんの会社を守るわけです。
労災訴訟対策としてまだ未加入であれば、必ずこの記事に目を通して戴きたいと思います。必ず皆さんの会社の危機を救う保険の一つですので、是非ご参考ください。
まとめ
運送業の労働環境の改善は業界全体としても最重要課題の一つでしょう。精神疾患などの病気が労災認定されている件数が、全ての業種の中で最も多い業種という実態は、今後ますます労災訴訟の可能性を高めてしまうことにもなりかねません。
会社の労災訴訟の対策の一つの手段として“労災の上乗せ保険”に加入しておくことは、会社の経営継続のためにも大変重要です。
ですが、運送業で働く人たちに、いかに働きやすい環境を作ってあげることができるか。これが会社として一番重要でしょう。